多田 「失敗の経験」あってこそ、今の急速な成長があるということですね。

佐藤 ええ。製品には国境はありませんが、ビジネスはその土地に合わせて展開しないと難しいということに気付かされたのです。要は製品だけではなく、現地の販売先やアフターサービス、お客様との信頼関係など、その土地でビジネスを展開するための基盤を構築することが不可欠だということです。

 そこで、1990年代に入ってからは、その土地に合わせた展開をしていく方針にシフトしていきました。

グローバル展開の成功要因は
勝負する製品分野を絞ったこと

テルモがグローバルで勝ち続ける理由、全員で共有する「価値観」重視の戦略とは多田洋祐(ビズリーチ社長)

多田 なるほど。ただ、すでに大きな市場がある各国では、多くの競合企業も存在するかと思いますが、どのように勝ち筋を見出していかれたのでしょうか。

佐藤 「勝負する製品分野を絞った」ことは、グローバル展開における成功要因の重要な1つだと考えています。医療機器の市場には超巨大企業がいくつも存在します。日本企業がそのまま参入しても負ける可能性が高いです。

 そこで私たちとしては、別の道を探る必要がありました。自分たちの強みは何か。どうすれば勝てるか……。それを求め、出した結論の1つが「カテーテル」事業です。

 カテーテルは、尿管や血管などに挿入し体液を抜き出したり、薬や治療器具を管から通したりする細い管です。世界のライバルメーカーたちも手掛けていた製品ですが、欧米企業は最終的に患部を治療する製品を追求する一方で、それ以外の基礎的なカテーテルは「優先順位」が低い分野。しかも、我々の自社技術を生かすことができる製品でした。ここに注力することで、成長の道筋が見えました。

 現在では、我々も基礎的なカテーテルを基盤に事業を展開し、最先端の治療機器も手掛けています。最近では、このカテーテルを用いて肝臓がんや心臓、脳などを血管内から手術する方法が急速に進化しています。そのお陰で、カテーテルの用途がどんどん広がっていることも事業成長の追い風になっています。