日本銀行の黒田東彦総裁4月27日、金融政策決定会合後の会見で受け答えする日本銀行の黒田東彦総裁 Photo:JIJI

「無制限国債購入へ」。4月27日に行われた日本銀行の金融政策決定会合の後、多くのマスメディアはそう報じた。「コロナ禍による経済混乱の下、日銀はついに禁断の領域に踏み込んだか」と感じた人は多かったのではないかと推測される。

 だが、日銀の声明文や黒田東彦総裁の記者会見で「無制限購入」という言葉は一度も使われていない。従来日銀は、国債保有額の年間増加ペースについて「約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買い入れを行う」と説明してきた。4月27日の実質上の変更は、この「めど」の削除である。

 債券市場や短期金融市場の参加者の間では、その「めど」は実態からすでに完全に乖離していると受け止められてきた。4月20日時点の日銀の国債保有額は、1年前に比べて14.3兆円しか増えていない。

 いくら「弾力的」とはいえ、実態が14兆円程度であれば「めど」がなくなっても買い入れペースが80兆円を超えることは当面考えにくい。しかも日銀は、2016年9月に、国債購入額に焦点を絞った政策をやめ、短期金利をマイナス圏に、10年金利をゼロ%近辺に誘導するイールドカーブ・コントロール(YCC)に政策を移行している。

 インフレ目標の達成が見えない中、80兆円という財務省の新規国債発行額を大幅に上回る買い入れペースを維持することは、当時技術的に不可能になりつつあった。