タミー・サン氏は典型的なシリコンバレーのIT起業家だが、最近、柄にもなくローテクなツイートを投稿した。「ズーム疲れのせいで固定回線やダイヤル式電話が恋しい」。企業向け不妊治療支援を手がける新興企業キャロットの創業者で最高経営責任者(CEO)の同氏はこう書き込んだ。「ズーム疲れ」は、オンライン会議が増え過ぎたことによる苦痛だけではない。社会科学者によれば、人間はこれまでに本能的で微調整のきくコミュニケーション方法を身につけたが、それを混乱させるテクノロジーを突然一気に採り入れた結果だという。「われわれは目の動き1つでも意味を読み取るように進化してきた。人類はそうしたシグナルを意味ある方法で生み出すことによって生き延びてきた」。スタンフォード大学のバーチャル・ヒューマン・インタラクション研究所の所長を務めるジェレミー・ベイレンソン教授はこう話す。「ズームは人を圧迫するほどの手がかりを与えるが、それらはシンクロ(同調)しない。それが生理学的に大きな打撃となる」