僕がB2B市場で勝負する理由(ワケ) 

 例えば、グローバルに展開する製造業では、製品開発に関わる大容量の秘匿データを地球の裏側の開発拠点(または生産拠点)に配送する業務が日常的に発生している。

 その場合、まず電子媒体にデータを焼きつけるが、後には社内の出荷手続きが待っている。それを国際郵便に乗せ、到着確認と内容物(データ)のチェックを行う。万が一、媒体自体や内容物の破損が発見されれば、また同じ作業をイチから繰り返さなくてはいけない。ある企業では、こんなことに約14日のリードタイム(所要時間)を計算に入れているという。

 これを、〈イーパーセル〉の技術を使えば、世界中どこであっても距離に関係なく、わずか数十秒から数分程度で、「安全」「確実」にデータを届けられる。

 冷静に考えて欲しい。この違いが、ビジネスにおいて何を意味するのか?

 〈イーパーセル〉は小さなITベンチャーにすぎないが、「技術」を通して、企業の業務フローを劇的に改善し、そこで働くホワイトカラーの行動様式を変えた。企業の中の行動様式が変われば、産業構造全体もよりムダのないものになっていくだろうし、やがては社会システムそのものを変革できるかもしれない。

 これこそが、「世界を変える」ことに直結するのだ。僕の願いが叶うなら、いずれ事業に成功して、ベンチャーとして日本のB2B市場でどんな参入障壁を乗り越えてきたか、その体験や知恵をひも解いて示したい。

 それができれば、同業のベンチャー経営者にとって大きな励みになるだろうし、これから起業を真剣に考えている若い人の背中を、「畏(おそ)るる無かれ」と押してあげることにもなる。僕は若いベンチャー経営者の活躍なくして、日本の産業の将来はないと信じている。