緊急事態宣言明けの渋谷の様子 緊急事態宣言明けの渋谷の様子。日本経済に「V字回復」はあるか Photo:Takashi Aoyama/gettyimages

グーグルのモビリティ指数で
日本の自粛は独自路線のスウェーデン並み

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界各国で政府による行動制限が実施された。ただ、行動制限の程度は国・地域によって大きく異なる。これはグーグル社が公表する「モビリティ指数」から確認できる。

 同指数は、スマートフォンアプリなどの位置情報から滞在人数・時間が指数化されたもので、地域は「住居」「公園」「食品・薬」「小売・娯楽」「駅」「職場」の6つに分けられている。新型コロナウイルスの流行前との差を見ることで、指数から行動制限の規模を把握することができる。

 経済活動との関わりが深いと思われる小売・娯楽、駅、職場の3地域を対象に、世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大した3月1日から5月15日までの期間のモビリティ指数を見てみよう。

 指数が大きく落ち込んだ地域は、新型コロナウイルスによる被害が深刻な欧州だ。特に、欧州で感染拡大が最初に始まったイタリアでは、店舗の営業停止のみならず罰則付きの外出禁止令が出され、モビリティ指数は-65%の大幅な減少となった。

 同じ欧州でも、独自の行動制限をとっているのがスウェーデンだ。他の欧州各国と異なり、小売店、レストランなどでは一定の距離をとることが推奨されるにとどまり、営業が続けられている。学校も高校・大学こそ閉鎖されているものの、小・中学校は校舎での授業が続いている。この結果、モビリティ指数の落ち込みも相対的に大きくない。

 ブラジルでは、ボルソナロ大統領が経済活動を優先し、感染拡大を容認する発言を繰り返していることで批判を集めている。しかし実際には、州知事の権限によりリオデジャネイロなどの大都市を中心に小売店やレストランの営業停止措置がとられており、モビリティ指数は世界の平均並みに落ち込んでいる。

 日本では、政府や自治体からの自粛要請を批判する立場からスウェーデンを目指すべきとの主張が示される一方、経済活動への配慮を批判する立場からはブラジルの被害の大きさを見るべきとの主張が示されるなど、議論が錯綜している。日本のモビリティ指数の落ち込み幅はブラジルと比べて小さく、スウェーデンと同程度だった。