…>重要度を判断させるのが難しい

 仕事の優先順位をつけるときによく使われるのが、『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著、フランクリン・コヴィー・ジャパン訳、キングベアー出版)にある、「重要度」と「緊急度」という2つの軸を使って4つの象限に分けていく方法です。

(1)重要度も緊急度も高い仕事
(2)重要度は高いが、緊急度は低い仕事
(3)重要度は低いが、緊急度は高い仕事
(4)重要度も緊急度も低い仕事

 まずは、重要度を重視して、優先順位をつけるようにしていくべきです。もちろん、(1)の仕事が最重要です。

 次に、後回しにしがちな「(2)重要度は高いが、緊急度は低い仕事」です。時間が経過するにつれて、「(1)重要度も緊急度も高い仕事」になっていくので、先にやったほうがいいのです。

 たとえば、来期の商品のラインナップを11月までに完成させなくてはならないとします。この仕事は7月の時点では、(2)の象限ですが、9月に入れば、(1)の「重要度も緊急度も高い仕事」になるわけです。

 たいていのリーダーは、「何が重要かをきちんと見極めていこう」(×)「急ぎの仕事に振り回されないように」(×)「余裕を持って仕事を進めていかないといけないよ」(×)と、部下に言い続けます。

 しかし、リーダーが思うようには、部下は優先順位をうまくつけられないものです。

 リーダーからすると、重要だと思っていた仕事が後回しにされることが少なくありません。

 なぜなら、それはリーダーと部下の間に認識の違いがあるからです。仕事に対する思い入れや重要に感じるポイントは人それぞれ。重要度の高低を誤りがちです。リーダーからすると、「重要度も緊急度も高い仕事」が後回しにされている問題が起きています。

 私が思うに、「重要度」というのは抽象的で、判断軸にするのが非常に難しいのです。

…>仕事の優先順位がわかる

 そこで、重要度の基準を「成果」と「実現度」という2つの視点で4つの象限に仕事を分けたうえで、(1)(2)(3)(4)のように、優先順位をつけるようにアドバイスします。

(1)成果が大きく、実現度が高い仕事
(2)成果は大きいが、実現度が低い仕事
(3)成果は小さいが、実現度が高い仕事
(4)成果が小さく、実現度が低い仕事

 まずは、成果の大きさを基準にして優先順位を決めます。

 100万円の売上が立つ仕事と2000万円の売上が立つ仕事なら、後者の仕事が重要ということです。

 リーダーが明確な基準を設けたうえで、「売上につながるか。コスト削減になるか。数字で判断しよう」(○)と伝えれば、部下は4つの象限に当てはめなくても、どの仕事を優先したらいいかがわかります。

 「実現度」も忘れてはいけません。期限がタイトであったり、必要な人員を確保できなかったりするような仕事は後回しにするかやめるかにします。

 やがて、部下の優先順位のつけ方も改善されました。

「これやって。あれやって」だと、部下は言われたことだけをやる、指示待ち人間になってしまいます。ある程度、考えさせる余地を持って接することが大事です。

 成果と実現度を示した結果、「重要度も緊急度も高い仕事」が後回しにされることなく、効率的に進められるようになったのです。

 また、部下が重要な仕事を後回しにして、質の低いものを慌ててつくるということもなくなりました。

 さらに、部下がしっかり優先順位をつけられるようになったことで、緊急度は高くなくても本来重要な仕事を優先で進め、成果にも結びつくようになっていくのです。

【ポイント】
何が重要なのかは必ずしもリーダーと部下の間で一致しない。
「成果の大きさ」「実現の可能性」で考えてもらおう