リーマン後に何をしたかで
企業の優劣が鮮明に分かれた

杉田 いい企業とは、「リーマンショックの後にやるべきことをしっかりやっている」企業なのです。10年あまり前の世界的な金融危機の時に、「こういうショックがいつかまた起こったら、うちの会社はどうなってしまうのか」を考え抜いた。その上で弱い事業をいったん整理して、事業ポートフォリオを変えていたのです。だからコロナに直面しても、結構持ちこたえられている。

 企業の中には往々にして、いずれはやめなくてはいけない事業があるものです。限界利益ぎりぎりで回しているような事業がそれですが、平時はそれなりに収益の上積みにはなる。だから経営者は、いずれ撤退するにしても経営に大きなショックをもたらさないよう段階的に進めようと考えがちでした。ところがこういう弱い事業は、今回のように需要が落ちる局面では、一気に赤字に転落してしまう。いい企業はこういう「いずれ」の事業をきちんと整理し、新しい領域に投資をしてきた。だからコロナで需要が急減した後でもしっかりしているのです。

写真:杉田氏
すぎた・ひろあき/東京工業大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。JTBを経て現在に至る。消費財、自動車、メディア、サービス、産業財等の業界を中心に、トランスフォーメーション、グループマネジメント、グローバル化戦略、マーケティング戦略策定・実行支援、営業改革、組織・人事改革等のコンサルティングを数多く手がける。6月に『プロフェッショナル経営参謀』(日本経済新聞出版)を刊行。 Photo by Y.A.

 経営の不確実性には、「何が起きるか分からない」と「いつ起きるか分からない」の2種類があります。ただ「何が」のほうは実はある程度、平時から想像できている。問題は「いつ」の方です。今回のコロナショックは、「いつか起こるかもしれない」という経営上の難局をもたらし、「いずれ」何とかしなければならなかった経営課題を経営者に突き付けているのです。

 リーマンショックの時にやるべきことをやった「いい企業」は今改めて、前回の危機を振り返っています。世界の優良企業と比べ、自社はどこまでやれたのか、何ができなかったのか。

 ある経営者は、「われわれ日本企業は、弱い事業を売って強い事業に集中することまではできた。しかし海外のエクセレントカンパニーと比べると、M&A(企業の買収・合併)を含む大規模な投資は圧倒的に足りなかった。そこで差が付いた」と言っていました。だから今回は、「これから何に、どこまで投資をするか」を中心に議論しているそうです。コロナショックを機会と捉えて、デジタル化の推進を含む成長投資を加速させるのだと思います。

 一方でホラーストーリーとしては、いずれやるべきことに手を付けないままの企業はどうなるか。それは、破綻してしまうわけです。

――破綻とは成長戦略が失敗するという意味ですか。それとも経営破綻という意味ですか。

杉田 企業自体が経営破綻します。コロナの影響が長引くことを想定した場合、どこかの時点で資本が持たなくなる、キャッシュが回らなくなるという企業はやっぱりあります。そして最終的に破綻する前にまず、投資家のようなお金の出し手から、とてつもなく大きなリストラを要求されるでしょうね。お金を出した側にしてみれば、企業が破綻してなくなってしまうと資金が回収できなくなる。だからやれるだけのリストラを求めます。

 もう一つ、企業の分割と売却も求められます。今あるアセット(資産)をどうやったらより大きな金額に変えられるか。そして、それをどう分配して投資回収するか。ぼやっとしている企業は、お金の出し手からそういう対象にしか見られなくなるのです。