外食や小売りといった業界が急降下型の打撃を受けたのに対し、電機業界のコロナショックは一見軽微。だがその実、水面下では30年来の大きな地殻変動が起こっている。特集『外資コンサル総力解明 7業界の生存戦略』(全12回)の#9では、ベイン・アンド・カンパニーが豊富な海外事例を示し、国内電機各社が打つべき戦略を提言する。関係者必携の業界の打撃と展望が一目で分かる「ティアシート」(B4判)付き。(構成/ダイヤモンド編集部 村井令二)
コロナ禍で顕在化した
サプライチェーンの脆弱性
グローバルに事業展開する電機業界は、新型コロナウイルスの感染拡大の中で、サプライチェーンの脆弱さが浮き彫りになった。1980年代から進めてきた生産拠点の海外シフトは、自動化とデジタル化の技術を駆使して見直しを行うことが戦略として重要だ。
(1)コロナの打撃
電機・テクノロジーの産業は、コロナのインパクトが他の産業に比べて小さかったといえる。
2020年1月から6月までの業種別の時価総額の騰落を見ると、ほとんどの業種は米国西海岸で外出禁止令が出された3月に急落してから、回復できていない。だが、テクノロジー業種の時価総額は1月から6月にかけて5%増加した。
もちろん、テクノロジー業種の中でも、サブセクター(下位分類)では濃淡がある。特に伸びているのは、米グーグル、米マイクロソフトなどに代表されるクラウドサービス産業。ソフトウエア産業も伸びた。
リーマンショックの頃は、ソフトウエア、半導体、ハードウエア、ITサービスなど、テクノロジー業種の全てのサブセクターで時価総額が急激に下がったが、今回のコロナでは、クラウドサービスやソフトウエア産業は時価総額が大きく伸びていて、グローバルではむしろチャンスが到来している。
それに対し、コロナのインパクトが最も大きいサブセクターは自動車向けの電子部品。グローバルの自動車生産台数は、今年はおそらく昨年より25%ほど下がるのではないか。それが戻るのは早くて22年くらいまではかかるので、今年を含めた3年間は非常に厳しいだろう。
スマートフォンについても、今年は全体の出荷台数が10~20%は落ち込む想定だ。このため、日本の電機メーカーをはじめ部品メーカーは短期的に厳しくなる。
もっともグローバルのスマホの需要は地域によって違う。中国は20年第1四半期(1~3月)にぐっと落ち込んだものの、第2四半期(4~6月)から回復する見通しだが、米国、欧州は第2四半期に落ち込んで、立ち上がりはやや鈍いだろう。
日本の電機メーカーの20年3月期決算でも、事業ポートフォリオがITサービスに偏重している会社は良かった一方で、逆に自動車関連のビジネスが多いところは厳しかった。もちろん決算で分かったのは3月までの結果なので、本格的にコロナの影響が出てくるのは今年度に入ってからになる。