生存戦略#02Photo:malerapaso/gettyimages

コロナ禍の打撃が甚大だったアパレル業界。老舗のレナウンが経営破綻したばかりか、これまで黒字だった企業も業績が暗転した。特集『外資コンサル総力解明 7業界の生存戦略』(全12回)の#2では、アパレル企業が存亡の機に立たされる中、アパレル業界のコロナショックの深大さと構造問題、そして生き残るための戦略を、ローランド・ベルガーが提言する。関係者必携の業界の打撃と展望が一目で分かる「ティアシート」(B4判)付き。(構成/ダイヤモンド編集部 相馬留美、杉本りうこ)

「先が見えない!」企業の悲鳴受け
はじき出したコロナ禍の谷の深さ

 新型コロナウイルス感染症が国内で深刻化した4月ごろから、アパレル企業から「先が見えない」と悲鳴が上がるようになった。4~5月は業界にとって、秋冬物を仕込む時期だ。コロナ禍でサプライチェーンが停滞し、いつ店舗が再開するかも分からない。そんな中でも、秋冬の商品を発注しなければならない。切羽詰まったアパレル企業の参考になればと、私たちは4月の時点で業界へのコロナの影響を定量的に試算した。本稿はその内容をアップデートし、さらにアパレル企業の活路を示した。

(1)コロナの打撃

 コロナは業界に四つのネガティブな影響を与えた。外出抑制による実店舗の販売減少、インバウンド消費の蒸発、景気の悪化を受けた消費意欲の減退、そして中国など生産地でのサプライチェーンの停滞だ。一方で、ポジティブな要素も二つある。巣ごもり消費によるEC(電子商取引)の拡大と、感染拡大の終息後に訪れるリベンジ消費だ。

 これらの六つの要素を総合し、2020年通年の市場規模について3通りの予測を立てた。楽観シナリオのA、中庸シナリオのB、悲観シナリオのCである。いずれも感染拡大の第2波はない前提だ。6月中旬の現時点では、中庸のBシナリオが最も現実味がある。ではこのシナリオでは、今年のアパレル市場はどこまでしぼむのだろうか。