生存戦略#03
Photo by Yoko Akiyoshi

あらゆる企業の業務に急速に普及するリモートワーク。これが「要らない中間管理職」を浮き彫りにするのだという。特集『外資コンサル総力解明 7業界の生存戦略』(全12回)の#3は、ボストン・コンサルティング・グループの杉田浩章日本共同代表と、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授の対談の後編。アフターコロナ時代に生き残る人、淘汰される人とは。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

中間管理職の「仕事」
上に報告、下に伝達は不要に

ボストン・コンサルティング・グループの杉田浩章日本共同代表(右)と早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授(左)は旧知の仲。対談は予定の時間を過ぎても語り尽くせないほど盛り上がった Photo by Y.A.

――コロナショックを受けて、経営学の世界ではどんな議論が始まっていますか。

入山 非常に大きな論点になっているのは、リモートワークが定着する中で、どうやって企業という組織を動かしていくのかということです。

 デジタルツールを使ったリモートワークでは、情報や知識のほとんどは文字や音声、映像といった形で共有できます。ではそういった情報共有のレベルを超えて、リーダーの言葉に共感してもらう、心の底から納得してもらうといったことが、リモートワークでどこまで可能なのか? リモートワークがアフターコロナの業務の基本になっていく中で、デジタルツールでも社員を腹落ちさせられるかどうかが後々、企業をふるい分けていくのではないでしょうか。

 この前提にあるのは、センスメーキング理論です。センスメーキングとは日本語で言えば「腹落ち」。正しい答えが簡単には見つからない状況で、物事に何らかの意味を与え、組織のメンバーを納得させ、足並みをそろえていくことです。組織心理学者が発展させ、経営学に大きな影響を与えてきました。僕は日本企業にとって、このセンスメーキングが一番重要な論点と考えてきましたが、アフターコロナという変化の大きい環境ではますます重要になりそうです。

杉田 アフターコロナの世界では、企業とそこで働く人々の役割を定義し直す必要があります。このような「企業が存在する上でのパーパス(目的)」をどう定めるかは、近年の経営コンサルティングの重要な領域になっています。リモートワークで社員を腹落ちさせられるかという問題とつながっていますね。

 もう一つリモートワークについて実務的な観点から言うと、リモートワークをうまくできる企業とそうでない企業との間で、経営のスピードが全然違ってきそうです。うまくできる企業では、現場のリアルタイムの変化をトップマネジメントが直接吸い上げられるようになり、経営判断を下すサイクルを従来より格段に速く回せるようになるでしょう。

 言い換えればリモートワークでは組織の階層が減り、中途半端な中間管理職が不要になります。中間管理職が組織の階層の間で、情報を経営層に上げたり、下に伝えたりしていたやり方が、根本的に変わってくるのです。