不況こそ投資のチャンス
その障害は意外にも取締役会

入山 アフターコロナの経営環境は徐々に第2ステージを迎えています。株価は戻りつつありますが、まだ安いところも多い。だから大事なのは今、どれだけ攻めの投資をできるか。統計的に言っても、不況期に投資したほうがIRR(内部収益率、投資案件を評価する指標の一つ)は高くなっています。ですから今、PE(プライベート・エクイティ)ファンドの活動が活発化しているのです。

 ただ事業として投資をするには、長期の方向感がないとできない。その意味で、投資の局面において実は非常に大きな問題なのが、ガバナンス(企業統治)のあり方です。日本では近年、委員会設置会社にして、大学の先生や士業の有識者を社外取締役に入れることが増えました。僕自身、複数の企業で社外取締役をしているのですが、経営経験のない社外取締役は「リスクを回避できるよう、いかに企業の行動を止めるかが自分の仕事」と考えている面が否めません。

写真:入山氏
いりやま・あきえ/慶應義塾大学経済学部卒業、三菱総合研究所で調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサーを経て13年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)。19年から現職。近著『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)は世界の主要経営理論30を完全網羅した解説書。 Photo by Y.A.

杉田 そういう社外取締役は「投資をした場合、もしこれこれという事態が起こったら、株主にどう説明できるのか」といったリスクサイドばかり突いてくると言います。だから経営陣は、投資判断を下すのがものすごく大変になっている。

 ある企業の経営者が語っていたことがあります。その企業はリーマンショック後に、ある事業のコスト削減をかなり大胆にやって、短期的な利益を生みました。当時はとても称賛されたのですが、経営者は今、「中期で考えると、実は大きな間違いだった」と言うのです。なぜならその事業の市場は結果として想定したよりも需要が戻り、コスト削減を優先したその企業はシェアを失ってしまったからです。

 ですからその経営者は、今回のコロナショックでは中長期の需要がどこまで戻るかというシナリオを立て、どこまで辛抱するかをしっかり考えているそうです。そして「これは、なかなか投資家などには分かってもらえないので、あまり表立っては言わない」と話していました。短期的な利益を出す行動を取った方が、投資家からはほめられますからね。

 短期の利益を取りにいくべきなのか、短期的利益を捨ててでも中長期を優先するほうが後々大きな成長につながるのか。こういうトレードオフの議論を、きちんとできるボード(取締役会)かどうかが、今の局面で問われていると思います。ある種夢想的であったとしても、未来をいったん見通し、来る新しい世界がどうなっているのかから引き戻して、今つかむべきチャンスを考える。こういう人がボードにいなければ、中長期を見据えた経営はなかなか難しいですね。

入山 日本電産の永守重信会長に何度か会ったことがありますが、いつも30年も先のことを夢中で語っていますよ。永守さんはコロナの後も、奮い立っているそうです。