大企業にパワーハラスメント(パワハラ)の防止対策を義務付ける「女性活躍・ハラスメント規制法」が6月1日に施行された。2022年4月1日からは中小企業も対象となる。だが、法的な環境が整備されつつある一方で、新型コロナウイルスの影響による在宅勤務の拡大に伴い、新たなパワハラ問題が深刻化しつつある。(社会保険労務士 木村政美)
従業員数100名の製造業。4月中旬から総務部(総務1課、総務2課)が在宅勤務となり当面の間継続予定。
<登場人物>
A子:25歳。総務1課で貿易事務を担当している。
B:35歳。独身。総務1課長でA子のほかに10名の部下がいる。
C子:30歳。総務1課主任。
D:45歳。総務部長。
E:甲社の顧問社労士。
在宅勤務で始まった
オンライン監視
「往復3時間の通勤がなくなるなんてラッキー!これで毎日朝寝坊ができる!」
在宅勤務となり、朝が弱い上に遠距離通勤でクタクタだったA子は、会社の決定に喜んだ。
だが、いざ在宅勤務が開始になると思いもよらなかった悩みが浮上してきた。それは上司であるB課長の言動であった。
B課長は「業務状況を確認する」との理由で、部下たちにテレビ電話をつなぎっぱなしにするよう指示。自らは常にパソコンの前に座り、1時間ごとにチャットで業務報告をするように求めた。
そして昼休み以外の時間に席を立つと、「なぜ離席したのか?」としつこく問いただした。
A子が最もうんざりしたのが、議題もないのに毎日4時から開かれる会議と、それに続いて深夜まで延々と行われるオンライン飲み会だった。
飲み会は就業時間外なので、参加は自由のはず。
だが、参加を拒否したり、会の途中で抜けたりするとB課長の機嫌が悪くなり「あの裏切り者が」などと、その場にいない部下の悪口をしゃべりまくっていた。
A子は自分の悪口を言われるのが嫌なので、眠たい目をこすりながらラストまで参加していた。