外食産業でひときわ深刻な打撃を受けている居酒屋業界。それでも鳥貴族には“秘策”があった。歓送迎会や宴会の自粛が広がるポストコロナ時代をどう乗り越えるのか。特集『ポストコロナ「勝ち組」の条件』(全18回)の#16では、居酒屋大不況に直面した鳥貴族の大倉忠司社長に、今後の戦略を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)
居酒屋が必要とされていないと感じた
競合の撤退が相次ぎ、鳥貴族にはチャンス
──新型コロナウイルスの感染拡大に対する政府の対応を見ていると、居酒屋は社会から“不要”とされた気がします。
外食の中でも特に居酒屋は、19~22時が稼ぎ時。営業時間の短縮を要請され、営業は20時まで、酒類の提供は19時までという状況では、居酒屋は営業しても利益が出ません。
そうした意味では外食の中でも一番厳しく、必要とされていない感じは受けました。
ただ、私はこれからがチャンスだと思っています。
──なぜでしょうか。
私自身も約2カ月間、自宅にいて外出を自粛しました。そして外で食べる食事のおいしさや楽しさを改めて実感した。今回の自粛は、外食の素晴らしさや、外で飲む素晴らしさが再認識されるきっかけになったと考えます。
──ですが、例えばコロナ前は月に10回居酒屋に行っていた人が、これからも10回行くでしょうか。回数は減る気がします。
コロナ前から、居酒屋市場の縮小が叫ばれていましたが、私はそう捉えていません。
吉野家やサイゼリヤなどでも、サラリーマンが飲み会をしており、業態の垣根がなくなっただけなのです。つまり、他業態に客を取られていたといえるでしょう。
居酒屋業界で言えば、大手居酒屋チェーンはコロナ前から徐々に若者を中心に客離れしていたため、居酒屋業態から食事業態の方に少しずつシフトしていました。
今回のコロナ禍によって、そのスピードが加速したと。その観点から言えば、鳥貴族にとってはチャンスですよね。競合が次々に撤退しているわけですから。