アリババとJDドットコムの二大EC企業で14兆円もの金が動いた巨大セール「618」。特集『ECのニューノーマル』(全8回)の#7では、巨大セールにおいて日本企業が存在感を失った理由を読み解く。(ダイヤモンド編集部特任アナリスト 高口康太)
巨大セールスが動かす
中国市場
コロナで冷え込んだ消費市場が一気に燃え上がったのが今年6月だ。中国第二のネットショッピングセールである「618セール」が開催された。コロナ不況から脱却する起爆剤として期待される中、果たしてアリババグループは6982億元(約10兆6000億円)を受注したと発表した。最終的にはキャンセルや返品の分が差し引かれるとはいえ、2019年の「独身の日」(11月11日)と比較しても2.6倍という驚異的な数字をたたき出した。2番手のJDドットコムも前年比33%増の2692億元(約4兆1000億円)を売り上げている。
中国のネット販売は最大のセールである「独身の日」と、第二のセールである「618セール」を軸に動いているが、値下げによるブランド価値の毀損、高額の広告費用を投下する必要があること、セール前の在庫積み増しなど、リスクも大きい。
それでもセール主体のマーケティングが続いているのは、消費者を刺激する効果が極めて高いからだ。ネットショッピングに積極的な若者の間では、二大セールの前には「何を買うの?」「どの商品がお得だ」といった話が日常的に交わされるほど、社会の一大関心事となっているわけだ。
巨大セールでのマーケティングに成功すれば、一気にブランドの認知度を高めることも夢ではない。ブランド価値を一歩一歩着実に高めていくのが日本式スタイルならば、年に2回のセールで大逆転を狙えるのが中国式だ。