新型コロナウイルスの感染拡大から初めて迎える夏は、猛暑が予想されている。コロナの影響で電力需給が逼迫する恐れがあり、電力業界は戦々恐々としている。特に電力小売り全面自由化に参戦する「新電力」は、需給の逼迫が資金繰りの悪化を招いて倒産危機に立たされる「最悪シナリオ」を警戒している。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
ウイズコロナで迎える猛暑は
18年の悪夢以上の最悪の夏
気象庁が6月下旬に発表した「3カ月予報」によると、7~9月は「猛暑」になる可能性が高い。この予報を聞いた中堅新電力幹部の脳裏には2年前の“悪夢”がよみがえった。
2018年夏は猛暑だった。16年4月に始まった電力小売り全面自由化で参入した「新電力」の多くは、大手電力の余剰電力が売りに出される日本卸電力取引所(JEPX)から電力を仕入れていた。エアコンなどの電力需要が高まって需給が逼迫し、100円/kWhを超える時間帯が出るなど、取引価格は高騰。その影響を受けて新電力勢の多くで業績が悪化した。
この頃、新電力は、顧客奪還を目指す東京電力ホールディングスをはじめとする大手電力会社から“反撃”を受けていた。JEPXの価格高騰と大手電力による反撃のダブルパンチで、当時、新電力トップだったF-Powerが120億円の最終赤字を計上したり、電力小売り事業から撤退したりする新電力が出始めた。
目下、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の縮小で新電力は、体力を奪われている。そんな中で猛暑が予想される今年の夏は、新電力にとって18年の悪夢以上の最悪なものになりかねない。