5年前の中国寄り書籍から
立ち上る党のにおい
最近、香港の法曹界と金融界、不動産業界で働く3人の香港人からほぼ同時に1冊の本を推薦された。いずれも男性で年齢は45~65歳、中国本土とビジネスなどで利害関係を持つ彼らの政治的立場は中国語で言う「建制派」、つまり中国寄り、体制寄りである。
書名は『香港治與乱:2047年的政治想像』(香港の統治と混乱:2047年に向けての政治的想像)、著者は香港大学政治公共行政学部の閻小駿准教授。中国本土の出身で、北京大学国際関係学部で学部、修士課程を修了し、その後ハーバード大学で政治学博士を取得している。出版社はいわゆる親中的な三聯書店(香港)有限公司であり、本書の内容が中国共産党の香港政策を批判的に論じるものでないことは、読む前から容易に想像できた。
本書は2015年9月、すなわち2014年、中国人民代表大会が発案した香港行政長官を決める選挙方案を引き金に勃発した「雨傘革命」後に出版されたものだ(過去記事参照)。昨年の逃亡犯罪人引渡条例改正を引き金に再発した抗議デモ、そして一連の運動の一つの帰結として、中国人民代表大会が制定した香港版国家安全法が世に出される過程で、5年前に出版されたこの本が今になって注目を集めている現状に、筆者は興味を抱いた。香港島の繁華街・銅鑼湾にある中国系書店商務印書館に足を運んでみると、5年前に出された本であるにもかかわらず、あからさまに目立つ位置に置かれていた。筆者はそこから中国共産党、そして党が香港の地で展開してきた統一戦線のにおいをかがずにはいられなかった。