コロナで崩壊寸前!どうなる!?エンタメ#2Photo by Jun.Takai/Photocompany

「シドニアの騎士」「空挺ドラゴンズ」などのフル3DCGアニメーション制作で知られるポリゴン・ピクチュアズ。緊急事態宣言発令とほぼ同時に社員のフルリモート化に踏み切ったが、通常時の80%の業務を遂行できたという。特集『コロナで崩壊寸前!どうなる!?エンタメ』(全17回)の#2では、塩田周三社長にアフターコロナにアニメ制作業界が直面する課題と、今後の在り方について聞いた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

300人が突入したフルリモートワーク、
“むちゃ振り”が成功し80%の生産性を達成

――緊急事態宣言中は社員全員がリモートワークでアニメーション制作業務を行ったそうですね。

 世界で新型コロナウイルスの感染者が増えて、中国や韓国など外国の状況などが情報として入ってきている中で、「前代未聞のことが起きている。自分たちも何か基準を決めて対策をしなければならない」と考えてあらかじめ情報収集していました。

 4月に入って、これはそろそろ潮時だ、と判断して、翌週からリモートワークに入れるようにシステム部門に準備を要請しました。4月7日に「明日からリモートに切り替える」と全社に通知。偶然ですが、緊急事態宣言が発令されたのはちょうど翌日の8日だったのです。

――ポリゴン・ピクチュアズの手掛ける3DCGアニメ制作は、専用の機材や計算能力の高いコンピューターシステムが必要です。どのようにリモートワークに切り替えたのですか。

 実はすでに当社では、パイプライン(アニメ制作の各工程でデータをやりとりするITインフラ)を年内に更新して、部分的にリモートワークが可能な環境をつくる計画を進めていたのです。徐々に年内に新しいものに移行する計画でしたが、これを大幅に前倒ししました。全社員300人が一斉にリモートワークに突入することは想定外でしたが……。

 今回は当初予定していた全面クラウドへの移行は間に合わないので、クラウドを介して会社のコンピューターにリモートで自宅のパソコンからアクセスできるようにしました。家のパソコンには、必要となる作業以外では基本的にデータをダウンロードせず、単なる表示デバイスとして使う。社員のネットワーク環境がまちまちの中、ちゃんと仕事が進むか心配でしたが、意外とうまくいった。今は画像の圧縮技術が進んでいて、300人が同時にシステムに接続して作業するピーク時でも、通信量は200メガバイト程度で済みました。

 といっても、全ての工程がこのやり方でできるわけではない。例えば最終工程で色の再現をチェックするには、1台10万円する専用のモニターで見なければならない。

 このあたりのモニターやペンタブレットは自宅に持ち帰っていいよ、という対応にしましたが、それでも全体的なチェックを行うためには巨大なマスターモニターというシステムで最終チェックしなければならず、この工程は緊急事態宣言が解除されて会社に戻ってきてからやることにしました。結果的には、通常時を100とすると80%くらいの生産性は維持できました。