自動車部品のカルソニックカンセイ(現マレリ)やパナソニックヘルスケア(現PHCホールディングス)、日立工機(現工機ホールディングス)など、米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は2010年代に日本で次々と大型ディールを獲得してきた。グローバルでは、今年2~6月だけで1.6兆円もの投資を行った。KKRがコロナ禍でむしろ強気なのはなぜか。特集『開戦 ファンド大買収』(全10回)の#4で、日本法人のトップに聞いた。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
コロナ禍で起こる変化を
投資のチャンスに変える
――コロナ禍で起こる産業の変化をどうみますか。
変わらないものと変わったものがある。アジアが世界の経済成長の原動力という考えは変わらない。アジアでは収入を持った中流層以上の人たちがどんどん増え、その人たちがデジタル化の主体になり、変化やニーズが生まれている。そこでわれわれは、eコマースやオンライン教育、オンラインヘルスケアなどの分野に投資をしてきたが、これらは変わらない。
一方で、以前からわれわれはアーバニゼーション(都市化)を投資テーマにしてきたが、コロナで在宅勤務をすると必ずしも都市部に住まなくても事足りる。それは日本人だけではなく世界中の人たちが実感していることで、今後、オフィスビルや都市部でのサービスには大きな変化が起こり得る。
今は世界中で国境が閉鎖されて往来が難しくなっている。人の移動の形は今と違ったものになるかもしれないが、物流やデジタルの取引は変わらない。人や物が、この先も一定の国や地域にとどまっていることはないと思うので、コロナが落ち着けば、一時的に停滞しても、この変化は戻ってくる。
実態が変わらないのに市場の価値が下がっているものがあるなら、プライシングのずれが起こっているということなので、そうした割安の分野に投資するのが一つ。それと、もう一つが変化を先取りして、大きく地形や景色が変わるであろう分野を予見して投資するもの。われわれは両方をやっている。
――コロナ禍において投資のチャンスは増えているといえるのでしょうか。
コロナが発生してからのKKRの姿勢は明確だ。今年2月から6月にかけて、世界で1兆6000億円ほど投資した。この4カ月でかなり速いピッチで投資を行っている。コロナ禍で起こる変化を投資のチャンスにしなければいけないと考えているからだ。