ファンド大買収#9
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国内外の民間ファンドがコロナ時代の投資機会を探る中、官民ファンドも動き始めた。産業革新投資機構(JIC)は政府保証枠の追加で、3兆円もの巨大ファンドに膨らんだ。すでに立ち上げたベンチャー投資ファンドに続き、秋にもプライベート・エクイティ(PE)ファンドの領域に進出する。特集『開戦 ファンド大買収』(全10回)の#9では、巨大投資ファンドJICの行方をレポートする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

投資余力は3兆円
VCに続き秋にはPE始動

「コロナ禍で競争力が失われた企業もあるし、コロナが去った後に競争力が保てるか、あるいは強化できるかという企業もある。コロナがこれだけ広がって長期化する中で、長い目で投資先はどこかを考えていかなければならない」

 7月8日、東京都内で記者会見を開いた産業革新投資機構(JIC)の横尾敬介社長は、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、巨大ファンドの運用を本格的に開始すると表明した。

 JICは旧産業革新機構(現INCJ)の後継組織として2018年9月に発足した。株主は国(出資総額2860億円)と日本政策投資銀行、メガバンク、大手製造業など企業25社(同135億円)。発足当初、報酬や運営方針などを巡って経営陣が所管省庁の経済産業省と対立。民間出身の取締役が3カ月で全員辞任するという異例の事態の後、ほぼ1年間休眠状態だった。19年12月に横尾社長を含む新しい取締役を選任して活動を再開。今回は経産省と折り合える経営陣といってよいだろう。

 JICは傘下に複数の子ファンドを設立して、それを通じて個別企業に投資する手法を採っている。同日、第1号としてベンチャー企業を対象にする傘下ファンドを設立すると発表した。

 このベンチャーファンドの規模は1200億円で、日本最大級のベンチャーキャピタル(VC)ファンドになる。1件当たりの投資は10億~50億円を想定しており、今後5年程度で投資先を選定していく。

 これに続いてJICは、秋口にも大手・中堅企業を対象にプライベート・エクイティ(PE)投資を手掛ける傘下ファンドを立ち上げる。

 ファンドの規模は2000億~3000億円になりそうで、こちらもPEファンドとしては、米カーライル・グループが今年3月に設立した過去最大の日本企業向けファンドの2580億円に並ぶ規模になる。JICはこのPEファンドを3~4年で使い切る方針だ。今後、日本の大企業・中堅企業に巨額マネーが流入することになりそうだ。

 さらに今回のコロナ危機を受け、政府は経営に打撃を受けた企業の資本支援策を盛り込んだ第2次補正予算をまとめ、JICには1兆5000億円もの政府保証借入枠を追加した。

 これにより、JICの投資余力は3兆円に膨らんだ。JICの前身の産業革新機構時代に「2兆円ファンド」と呼ばれていた官民ファンドは一段と肥大化することになった。