ファンド大買収#7

2017年に決まった東芝メモリ(現キオクシア)買収は、売却額2兆円という世界的にも指折りの大ディールだった。これを主導したベインキャピタルが、コロナ時代にうかがう次の投資チャンスとは。特集『開戦 ファンド大買収』(全10回)の#7で、日本法人キーマンに聞いた。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

自動車部品に電子部品…
まだまだカーブアウトは増える

――コロナ禍において投資のチャンスをどう見ていますか。

 コロナの中でも長期的な成長が期待できる会社の投資スタンスは全く変わらないが、コロナ前に良いと思っていた会社が(投資対象から)外れた例もあるし、新たに加わった会社もある。

 例えば、輸送機器のセクターでは人の動きが構造的に減ってきている。仮にコロナが明けても、以前の人の活動量が維持されないなら、その成長性について納得感を持って投資ができるかというと、難しくなる。バリュエーション(企業価値評価)のバランスが変わってきているとはいえる。

――輸送機器セクターの話が出ましたが、コロナをきっかけに自動車部品メーカーは、完成車メーカーの系列によって明暗が分かれているようです。どのように見ていますか。

 短期的にはコロナで需要が減る中で、流動性をしっかり確保できているかどうかがポイントになる。長期的には、完成車メーカーの系列への依存度が高かったところから、他の完成車メーカーや海外のメーカーに取引先が広がることが不可欠になるのではないか。

 ただ、これはコロナで動いたというよりも、コロナで加速したと言った方が正しい。世界を見渡すと、独ボッシュや独コンチネンタルなどは、完成車メーカーよりパワーを持っており、そういうところと戦って勝っていけるかが以前からの経営の論点で、その議論がコロナで加速してきた。