チケット価格も
コロナが変える

 今後、観客を入れたライブが再開される見通しだが、政府のガイドラインに沿えば、収容人数は会場の約50%に抑えなければならない。チケットの価格を上げなければ、売り上げは半分になってしまう。しかし、一律に上げてしまうのでは、単純計算すると価格は倍になり、受け入れられない人も多いだろう。

 そこで「新たな形が出てくるだろう」と話すのは電子チケット国内最大手、ボードウォークのCEO、遠藤政伸氏だ。

「今後は会場のライブと有料配信の両方をやっていくアーティストが増える可能性が高い。配信ライブは投げ銭機能なども実装されており、インターネット上でも参加を実感して楽しめる機能が充実してきている」(遠藤氏)。

 これにより、一つのライブで、会場の入場チケットと、配信の視聴チケットの二つのチケットと価格が存在するようになるだろう。音楽ファンはこれを受け入れるだろうか?

 それを占う事例がすでにある。現在、アーティストたちはこぞって「無観客・有料配信」でライブを再開させている。そうした配信ライブの視聴チケットはおおむね3000円台。

 6月25日に横浜アリーナで開催されたサザンオールスターズの配信ライブでも、価格は3600円(税込み)だった。最近は国内のメジャーなアーティストのライブチケットはおおむね1万円前後。その3分の1程度の価格なら、配信ライブでもファンは受容したということを、サザンのケースは証明した。

 幸いにもサザンは、状況によって価格に差が出ても受け入れられることを示した。50%しか収容できない状況でチケットを求めるユーザーはロイヤルティーが高いと考えられる。最前列で見られるなら数万円払っていい!というファンの要望に応えるチケット価格も登場するかもしれない。

 実際、ライブ事業も手掛けるエイベックス社長の黒岩克巳氏は「今後(日本の音楽ライブでは定着してこなかった)チケット価格変動制のダイナミックプライシングも導入していきたい」と話す。

今は最前列も最後列も一律のチケット価格が変わる可能性も今は最前列も最後列も一律のチケット価格が変わる可能性も Photo:Jun Sato/TAS18/gettyimages

 ただし、紙チケットは、スポンサー枠等のために必要なこともある。チケットを渡す場合、相手によっては個人情報の登録を強要しなくてはならない電子チケットは使い勝手が悪いことがあるからだ。また、コンビニと提携しているケースでは、紙チケット発券は客に店舗で“ついで買い”をさせることが主目的という事情もある。今すぐに、「紙ゼロ」というわけにはいかないかもしれない。

 それでも、ここ数年、電子チケットが存在感を増してきたのは確かであり、音楽業界団体とアーティストが問題提起してきたライブチケットの高額転売を禁止する「チケット不正転売禁止法」が2019年6月に施行され、個人認証を義務付ける電子チケットは高額転売防止策の一つとなっていた。そこにコロナ対策の役割も加わったことで、今後は電子チケットが主流になるだろう。

 どの席か分からない1枚の紙チケットを抽選で奪い合っていた時代は、過ぎ去るかもしれない。

Key Visual by Hirokazu Mori(waonica)