コロナは音楽を殺すのか#11Photo:gettyimages

特集『コロナは音楽を殺すのか?』(全11回)は、レコード会社、プロモーター、ミュージシャン、作詞家・作曲家、舞台スタッフ、チケット会社等、音楽業界のさまざまなステークホルダーへの取材を基に「有史以来最大規模の危機」に直面する音楽業界の現状に迫る。最終回では、アフターコロナに向けて音楽業界は何をすべきか、海外ではどのような動きがあるのか、音楽ジャーナリスト等、キーパーソンからの提言から導き出す。(ダイヤモンド編集部編集委員 長谷川幸光)

コロナ禍でも身動きがとれない
アーティストの「会社員化」

「弱点だらけでしたね」――。現在のコロナ禍における音楽業界の状況を聞くと、中西健夫氏(コンサートプロモーターズ協会会長)は厳しい表情でこう語った。

 音楽産業が抱える問題は多岐にわたる。CDやストリーミングなどビジネスモデルの問題、アーティストを取り巻く権利の問題、そしてわれわれリスナーに身近な消費や流通の問題など――。コロナ禍はあらためてそれらを浮き彫りにした。

 ビジネスモデルに関してはこの20年間、レコード会社が散々、やり玉に挙げられてきた。「やり方が古い」「時代への適応が遅い」「クリエーターを搾取するな」……。もちろん一理あるが、レコードビジネスが過去の産業となった今、レコード会社に変革を行う体力や感度はもはやない。そのことを前提に次の議論へと移る必要がある。

「日本ではCDアルバムですが、海外ではストリーミングでいかに成功するかが大前提になっています」。こう語るのは、音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏だ。

 大きな問題は、ストリーミングの時代に日本は今もCD時代の契約形態を引きずっており、それがコロナ禍においてアーティストをがんじがらめにしていることである。「アーティストの会社員化」ともいえる、前時代的なやり方は、アーティストのためにも、われわれリスナーのためにもなっていないのだ。