コロナは音楽を殺すのか#3Photo by Teppei Hori

特集『コロナは音楽を殺すのか?』(全11回)は、さまざまなステークホルダーへの取材を基に「有史以来最大規模の危機」に直面する音楽業界の現状に迫る。レコード会社の枠を超え「総合エンターテインメント企業」として多角的なビジネスを展開するエイベックスの黒岩克巳代表に独占ロングインタビューを敢行。#03では前編として、株主総会を終えたばかりの黒岩氏に、音楽ストリーミング配信のマネタイズ、ストリーミング時代の音楽制作、a-nationの開催など、多岐にわたって熱く語ってもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 長谷川幸光)

音楽は
斜陽産業ではない

――国内では2015年にCDなどの音楽ソフトとライブの市場規模が逆転しました(本特集#1『フジロック、サマソニ…4大フェスが音楽界の主役をかっさらった7つの理由』参照)。エイベックスはそれ以前からライブ事業に力を入れており、黒岩代表はライブ事業をリードしてきたまさに当事者ですが、市場の入れ替わりを見越していたのでしょうか。

黒岩氏エイベックス代表取締役社長CEO/エイベックス・エンタテインメント代表取締役社長の黒岩克巳(くろいわ・かつみ)氏 Photo by T.H.

 CDの売り上げは低下し続け、「音楽は斜陽産業だ」といわれていた時代もありました。CDの売り上げだけを見れば当然斜陽ですが、ライブの動員数や配信サービスの売り上げは伸長しているので、音楽市場全体を見ると実はそれほど変わっていません。人々のお金の使い方が変わっただけで。

 音楽のデジタル化が進んでいくことは予想ができました。2001年に米アップルの「iTunes」が登場し、こうした世界的な音楽マーケットの流れを見ても、CDのみを販売するビジネスはなくなっていくだろうと。

 一方で、2003年ごろから、米Live Nationといったライブ事業中心の企業が欧米を中心に急成長していました。デジタルへのシフトが進めば進むほど、フィジカルなライブの価値がより高くなっていく。そのユニークな点に着目し、2005年に「エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ」という会社を設立し、ライブ事業に力を入れたのです。

 われわれの場合はど真ん中にマネジメント会社があるので、弊社所属のアーティストは「360度ビジネス」、つまりビジネスの多角化を行える状況にあります。その中でライブを行うと、映像化や放映権の価値が高まったり、マーチャンダイジングを展開したりと、マルチチャネルでのマネタイズが可能になります。それらを全て踏まえた上で、ライブを行う機能を会社の中にしっかりとつくっていこうと考えて始めたのがきっかけでした。

――音楽ソフト市場が縮小する一方で、SpotifyやApple Musicなどの音楽配信サービスが急速に伸びています。このままCDは消滅するのでしょうか?