特集『コロナは音楽を殺すのか?』(全11回)は、レコード会社、プロモーター、ミュージシャン、作詞家・作曲家、舞台スタッフ等、音楽業界のさまざまなステークホルダーへの取材を基に「有史以来最大規模の危機」に直面する音楽業界の現状に迫る。コロナは今後のライブチケットの形も大きく変えていきそうだ。#10では、ウィズコロナ時代のチケットが単なる入場券にとどまらない役割や、一律だった価格を破壊する可能性について見ていく。(ダイヤモンド編集部 山出暁子)
コロナがきっかけで起こる
ライブチケットの二つの変化
新型コロナウィルスの感染拡大はライブチケットの形も大きく変えそうだ。これから来る大きな波の一つは電子化、もう一つは価格の‟柔軟”化だ。一つ目の電子化から見ていこう。
日本は世界でも珍しい「紙チケット大国」だ。音楽関係者によると「電子チケットの割合は5分の1にも満たない」という。だが、コロナがそれを変えそうだ。電子チケットの特性がコロナ対策にぴったりだからだ。
電子チケットは購入に際し個人認証が必須になる。購入者だけでなく、同伴者も個人情報を登録しなければならない。「今日行けなくなっちゃったからチケットあげるよ」といった受け渡しは一切できなくなる。
一方で、個人情報の登録が必須なので、仮にライブ後にコロナ感染者が確認された場合、本人と周辺の人の特定が可能で、追跡調査ができる。クラスター対策にも役立つのだ。
次は価格の柔軟化。これまで東京ドームの最前列でも最後列でも一律だったチケット価格にも差がつく可能性が出てきた。その背景にもコロナあり、だ。この新たな波を理解しなければ、あなたは好きなアーティストのチケットを希望通りに手に入れるチャンスを逃すかもしれない。