行動が意識を変える
「意識が行動を変える」という考え方がある。しかし、意識を変えようと頭で考え続けても、掛け声をかけられても、なかなか変わらない。とても時間がかかる。「顧客の状況を把握したり共感したりする意識を高めよう」といくら思っても、行動に移せない。
そこで、私は「行動が意識を変える」と考えている。発揮したい行動(それもできるだけパーツ分解された単純化された行動ならなおよい)を繰り返していくと、意識が変わってくるという考え方だ。
具体的には、例えば、次のように分解して、行動する方法だ。(1)ウエーターからその食事中にあった出来事の報告を受ける。(2)問題になる報告があったら、「○○の問題について、申し訳ございませんでした」というフレーズで挨拶する。(3)問題になる報告がなかったら、顧客の表情を確認する。
顧客が明るい表情を浮かべていたら、「お食事を楽しんでいただけましたでしょうか」と挨拶する。顧客が暗い表情をしていたら、「気になることがございましたでしょうか」と質問する。顧客の表情が読み取れなかったら、ニュートラルに「お食事はいかがでしたでしょうか」と聞く……という方法だ。マニュアルを頭にたたき込むのではなく、顧客の反応を見て行動を変える習慣を身に付けるのだ。
これを瞬時に繰り出す反復演習を10回程度行えば、ほとんどの人が状況に応じた話法を繰り出すことができるようになる。スマートフォンで自撮りをしながら、自分の表情を確認してみるとなおよい。そして、これらの行動が身に付くと、自然と顧客の声に耳を傾けよう、表情をよく観察しようという意識が高まってくるのだ。
今回、レストランのマネジャーは、私の経験した出来事や表情を踏まえず、普段通りの明るい表現で「お食事を楽しんでいただけましたでしょうか」を用いてしまった。状況に応じた行動を選択するクセが身に付いていれば、また違った一言が出ていたかもしれない。