ネジやシャフト一筋
海外比率が60%に
どんなに精密で小型化しようとも、工業製品にネジやシャフトは欠かせない。たとえば、デジタルカメラにはネジ山部の外径が0.8ミリほどの微小なネジが使われている。
1939年の創業以来、80年もの間、ネジを中心に金属部品を作り続け、厳しい業界を生き残ってきたのが神奈川県綾瀬市に本社を置くミズキである。同社3代目社長の水木太一(51歳)は「事業を伸ばそうと思ったら海外しかない」と語る。
同社は外径0.6ミリから12ミリまで、さまざまなサイズや形状のネジを毎月約100種類生産している。月産6000万本を誇り、タイとベトナムを中心に輸出し、売上高海外比率は直接販売で60%、間接販売を入れると90%にも達する。これだけ輸出していながら、生産は綾瀬市の本社工場のみに限定し、海外では一切作っていない。それは「日本で世界に通用するものづくりを続けたい」という水木の強い思いがあると同時に、“不良ゼロ”を追究するためである。
大量生産されるネジは従来、「不良があったら捨ててください、と簡単に言ってしまえるような意識だった」(水木)という。同社のネジが使われている分野は、ハードディスクが売り上げの20%、デジカメが30%、ヘッドランプ向け光軸調整用特殊ボルトなど自動車電装部品が40%を占めている。精密製品で使われるだけにネジの不良が許されないのは当然だが、水木は「海外に出すと決めた以上、不良があってもすぐに交換に行けないのだから、納入品はすべて良品が最低限」と決意し、実行した。
そのため、ミズキではどんなに小さなネジだろうと全品検査を徹底している。生産したネジを1本ずつパーツフィーダーという特殊な装置で整列させ、画像認識によって高速確認し、不良品を選別する。さらに、0.1マイクロメートルまで測定できるレーザーマイクロ装置や3次元測定機など必要な測定機をそろえて不可能と思われた不良品の出荷ゼロを達成した。
主要取引先であるスタンレー電気に納める自動車部品関連で、なんと年間不良ゼロを2016年度から4年連続で達成し、同社から品質優秀賞を受賞。パナソニックのデジカメではミズキのネジがかなり使われているが、16年度の評価で同業8社の中で1位となり、その後も1位を維持している。ちなみに、オリンパス製のデジカメでも、ほぼすべての製品にミズキのネジとシャフトが使われている。