国益は国の数だけ違うから、首脳同士が会っても合意できないときは当然あるが、基礎となる信頼関係は地道に構築しておかなければならない。安倍首相はトランプ大統領とは大の仲良しだが、習近平氏とはほとんど話をする機会がないというような関係ではまずい。

 北朝鮮や韓国との関係もそうだ。強硬姿勢を取れば一部の人の愛国心に訴えて支持率も上がる。政治家としては楽なやり方だろうが、関係が悪化してもお互い得るものはない。

中国の膨張の抑止に
「アジア・太平洋版のNATO」を

――安全保障政策として具体的な対応策をどう考えますか。

 中国の海洋進出や軍拡に対する抑止力ということでは、アジア・太平洋地域での集団安全保障システムを作ることを目指すべきだと思っている。

 中国は「一帯一路」戦略で、経済援助などをテコに中東やアフリカなどの西方に進出しているが、NATO(北大西洋条約機構)加盟国から以西には行かず、もっぱら南沙諸島への基地建設など、南のほうに進出して影響力を強めようとしている。

 米国をハブとして、日米、米韓、米豪、米比などの安全保障条約があるが、これらを緩やかに統合した枠組みを作るべきだ。共通の利益となる自然災害対処や対テロなどでの協力から始めて、最終的に安全保障機構となっていけば、中国の違法な進出に対抗ができる。

 中国を敵視するような性質のものだと成立しづらいので、国際法の順守を中心的な課題とし、中国も一部参加できるような状況を作れれば、なおいいのではないか。

石破 茂・元自民党幹事長
Photo by T.U.

憲法改正はエネルギーがかかりすぎる
「安全保障基本法」制定が現実的

――かりに“石破政権”になった時の安保戦略で考えていることはありますか。

 直近でやるべきことは話した通りだが、中長期的な課題の解決策ということでは、「安全保障基本法」を作って、自衛隊を国際法上の「軍」として位置づける方策を提起したい。

 日本には農業基本法とか教育基本法とか、基本法が50本ほどあるが、安全保障に関する基本法はない。だから、自衛隊の問題は常に「憲法改正」という議論になる。

 憲法では「陸海空軍、その他の戦力は保持しない」とあるが、現実にはイージス艦やF-35戦闘機、航空母艦のような「いずも」型護衛艦も持っている。

 それをめぐって軍隊だ、いやそうではないといった議論が続いてきた。これに最終的な決着をつけるのは憲法改正しかないのだが、それには大変な政治的エネルギーが必要だ。