世界5大宗教の一つ、「キリスト教」。英語のコミュニケーション能力を高めるためには、キリスト教文化への理解が必須である。
ビジネスエリートが激動の時代を生き抜くヒントを世界情勢、宗教、哲学などに学ぶ月1回の特別講義シリーズ。第3回は、英語のコミュニケーション力を高めるためになぜキリスト教文化を学ぶことが必要なのか、重要な単語や表現と合わせて解説する。(神戸情報大学院大学教授/国際教養作家・ファシリテーター 山中俊之)
円滑な英語コミュニケーションに必須の
「キリスト教」に関する知識
「彼(彼女)は、善きサマリタン(Samaritan;サマリア人)だな」
キリスト教徒が多い英語による社交の場でよく出てくるフレーズである。
この表現の意味が???であれば、キリスト教の英語表現について勉強した方がよいかもしれない。
「善きサマリタン」とは、新約聖書の「ルカによる福音書」に述べられている隣人愛の重要性を伝えるイエスによるたとえ話である。ご存じの方も多いと思われるが、以下のような内容である。
強盗に遭って半殺しになった人を、ユダヤ教祭司とレビ人は見過ごしたが、善きサマリタンは、宿屋にまで連れて行って介抱した上に宿代も払った。当時ユダヤ人社会においてサマリタンは信仰上の理由から必ずしも良くは思われていなかった。そのようなサマリタンについての評判に左右されず、イエスは隣人愛を実践するサマリタンを称賛する話をしたのだ。
この新約聖書におけるイエスのたとえ話から、困窮する人を助けることやそのために資金を拠出することが隣人愛としてキリスト教徒においては称賛される行為だと考えられている。キリスト教徒で知らない人はほぼいないだろう。
日本人が世界を舞台に英語を駆使して活躍できない理由の一つに、キリスト教に対する知識不足があると思われる。
イスラム教、ユダヤ教、仏教、ヒンドゥー教など世界の5大宗教と言われるキリスト教以外の宗教についての知識不足も問題であることは間違いないが、本稿では英語におけるコミュニケーションを主題としているので、英語と関連が深いキリスト教に焦点を当てることにする。なお、他の宗教については別の機会に述べることにしたい。