9月4日に発表された2020年8月の米国雇用統計は、5月から回復が続いていることが確認された。ただし、回復ペースは鈍化、さらに消費者行動の頭打ちもあり、先行き不透明感は依然強い。また、州別では一部で雇用環境の悪化が生じており、11月の大統領選の争点となり得る接戦州が複数含まれる。雇用環境は現職評価につながるため、トランプ大統領再選の障壁となる可能性がある。(伊藤忠総研 主任研究員 笠原滝平)
8月米国雇用統計の中身
雇用回復は業種ごとにバラつき
2020年8月の米国雇用統計では、最も注目される非農業部門雇用者数が前月から+137万人増加し、増加は4ヵ月連続となった。新型コロナ感染拡大により大幅減となった4月をボトムに、回復が続いている。
ただし、5月は+273万人、6月は+478万人、7月は+173万人と、7月以降は回復ペースに減速がみられる。8月の雇用者数の水準は、コロナ前である2月の1割減に留まっており、本来であればより力強い回復が求められる。
業種別に見ると、民間サービスの小売業や専門サービス業が全体をけん引する一方、レジャーは+17万人と、7月(+62万人)から増加幅が縮小した。レジャーにおいては、これまで全体の雇用増をけん引した飲食業で増加ペースが急減速したほか、コロナ前に比べて依然6割程度の雇用規模に留まっている宿泊業が伸び悩んだ(図表1参照)。