8月17日から、米国で民主党の全国党大会が始まった。最終日の20日には、ジョー・バイデン氏が大統領候補に正式に指名される。これに先立ちバイデン氏は、カマラ・ハリス氏を副大統領候補に選出し、11月3日に投票が行われる本選挙への体制を整えた。遅れに遅れた副大統領選出の経緯には、「バイデン政権」の姿を占う手がかりが秘められている。(みずほ総合研究所調査本部 欧米調査部長 安井明彦)
ハリス氏を攻めあぐねる共和党
無難な候補を選ぶバイデン氏の余裕
バイデン氏が民主党の副大統領候補に選んだカマラ・ハリス氏を、共和党が攻めあぐねている。
「(極端にリベラルなハリス氏の選出で)極左がバイデン氏を操っていることが明らかになった」「バイデン氏と(中道派である)ハリス氏の組み合わせに、ウォール街は大喜びだ」
これらは、いずれもハリス氏が副大統領候補に選出された直後に、共和党関係者から出た批判である。ハリス氏は極端なリベラル派なのか、それともウォール街が喜ぶ中道派なのか。共和党の見解ははっきりしない。
共和党の混迷は、今のところバイデン氏の副大統領選びが成功している証である。バイデン氏にとっては、批判の標的になりにくい候補を選び、できるだけ注目を集めないことが最善の展開だったからだ。
バイデン氏が大統領選挙を優勢に進めている最大の理由は、不人気なトランプ氏に世論の関心が集中している点にある。今回の大統領選挙は、バイデン氏が支持されているというよりは、トランプ氏の再選に反対する機運が強い。バイデン氏の年齢を問題視するなど、トランプ陣営は世論の関心を逸らそうとしてきたが、これといった特徴のないバイデン氏を攻めあぐねてきた。
ハリス氏の副大統領候補選出で、共和党の悩みは深まった。数十人に達する候補者のなかで、ハリス氏は最も攻めにくい候補だろう。実績、実力ともに定評がある一方で、政策面では強烈な印象が薄く、下馬評でも常に本命と目されてきたのがハリス氏だった。