名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第31回。最近は新型コロナウイルスの対策だけにとどまらず、腎臓移植の名医として知られ、途上国支援にも熱心に取り組むなど「八面六臂」の活躍をしている小林修三医師(湘南鎌倉総合病院院長代行・腎臓病総合医療センター長)を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
八面六臂で働く
腎臓のようなリーダー
「腎臓は人体の司令塔。すべての臓器をコントロールし、寿命さえも左右する、人体の隠れたリーダーです」
腎臓内科医の小林修三医師(湘南鎌倉総合病院院長代行/腎臓病総合医療センター長)は、自らの専門である腎臓の重要性をやや誇らしげに語った。ただ黙々と「おしっこを作る」だけじゃない。腎臓が担う八面六臂の働きっぷりは、彼の病院での役割や医療界での活動にも重なる。
2020年、コロナ禍が本格化した3月――。小林医師は病院スタッフに対し、珍しく声を荒げた。そのスタッフは5日前、PCR検査を受けたいと相談してきた1本の電話に、「様子をみましょう」と返答したまま、放置していた。電話の主はかつて同院で腎移植を受け、現在も通院中の患者だったため、情報はやがて腎臓病総合医療センター長を兼任する小林医師の知るところとなった。