病院の危機#5Photo:123RF

近年の医学部受験人気は、「医者は絶対に食いっぱぐれることはない」安定した高給取りである点がけん引してきた。しかし、コロナ禍によって、医者も貧することが露呈。セレブ志向の開業医が没落した。特集『病院の危機』(全6回)の#5では、開業医の危機に迫る。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)

「週刊ダイヤモンド」2020年9月5日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

医療にも不要不急があり
医者も貧することが露呈

 近年の医学部受験人気は、「医者は絶対に食いっぱぐれることはない」安定的な高給取りである点がけん引してきた。しかし、コロナ禍によって医療にも不要不急があり、医者も貧するということが露呈した。

 3~4月にかけて、新型コロナウイルスの感染患者受け入れ病院に勤務する医療従事者たちの奮戦が盛んに報道された。その陰では、多くの開業医が患者激減の異常事態にあえいでいた。

「連日感染者数を報道するマスコミと、一部の感染症専門医が散々あおったおかげで、今年は最悪の一年になる」

 東京都渋谷区で診療所を営むE医師はこう吐き捨てるように言う。感染拡大で不要不急の受診を多くの人が控えた。その結果、4~5月の彼の診療所の患者は前年の同時期に比べて半減した。

 東京都の緊急事態宣言が明けてからも、患者数は以前のレベルに戻らなかった。第2波が始まった7月末からは、再び閑古鳥が鳴いている。

 コロナ禍でオンライン診療による初診が解禁されたが、こちらは診療報酬が安過ぎて全くもうけにならない。

「テナントの賃料も高いし、あまりにこれが続くようなら、移転も考えざるを得ない」とE医師は沈痛な面持ちで語る。