病院の危機#3Photo:AFLO

コロナで患者が激減し、多くの病院が経営に苦しむ中、病院を救済するべきだとの声は大きい。では、守るに値する病院はどこなのか。特集『病院の危機』(全6回)の#3では、重篤な患者を治療する急性期での収益力、手術患者数、救急搬送患者数で病院の「実力」をランキングした。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

全ての病院を救ったからといって
医療を守れるわけではない

 病院は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経営が悪化している。個別病院の入院収益減少額(急性期)を推定すると、有名な大病院が大打撃を食らっていた(本特集#1『2000病院「コロナ収益悪化」ランキング!5位小倉記念、4位千葉西、トップ3は?』参照)。

 有名な大病院はこれまで多くの患者が集まり稼いできた分、コロナで失った額も大きかった。経営が苦しいのは大病院に限ったことではなく、中小病院もしかりだ。

 今、人々の間には、コロナ感染症に対応する病院に感謝の念を募らせ、将来の感染症対応のためにも、経営が苦しい病院を救おうという思いがある。国も医療界へ金銭面の支援策を出した。しかし、全ての病院を救ったからといって医療を守れるわけではない。

 では、守るに値する病院はどこなのか。実力のある病院である。

病院の供給過剰が不要な需要を生み
「なんちゃって病院」があふれた

 手術が必要だったり、救急搬送されたりする重篤患者を受け入れる「急性期病院」は供給過剰になっている。国はかねて、急性期病院に対し手術後の患者のケアやリハビリテーションなどを担う病院への転換を促していたが、シフトは進まなかった。手術後の患者のケアやリハビリテーションに比べて、急性期の方が入院基本料が高いからだ。

 医療財政が逼迫する中、国は医療サービスに支払う診療報酬の配分によって、急性期リストラなどの医療改革を推し進めている。「本年度の診療報酬改定で急性期病院に対し、手術、救急搬送、がんなどの重篤患者を受け入れた実績をより厳格に求める条件を付けた」と医療コンサルティング会社であるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)の太田衛アソシエイトマネジャーは言う。

 日本は世界と比べて病床(ベッド)の数が多く、供給の過剰が、不要な需要まで生んだ。重篤でない患者で病床を埋める「なんちゃって急性期病院」があふれ、金や人などの医療資源を吸い取る。例えばウイルス性の肺炎や腸炎などの治療では、外来で間に合う患者まで入院してきた。コロナ禍で減った入院患者の中には、もともと入院が必要でなかった人も含まれていたわけだ。

 つまり、コロナ終息後も消えたままでよい需要もある。

 また、病院の数に対して医者の数は足りず、必要な場所に医者が行き渡っていない。手術を行う場所は集約した方が、専門性を磨く医者が手術を多くこなせ、技術レベルが上がる。病院が多いため患者が分散することは、病院や医者の医療技術の向上を妨げる。

 コロナ禍で危機に陥った病院をむやみに救うのではなく、守るべきは、実力のある病院。適切に医療を供給するための淘汰や統合再編はあってしかるべきなのである。

 ダイヤモンド編集部では、各病院の実力を捉えるべく、収益力としてコロナ前の年間入院収益(急性期)、急性期病院としての実績を測るものとして年間手術患者数と年間救急搬送患者数をそれぞれランキングした。