「監視」というとマイナスのイメージを抱きがちだが、必要なコンプライアンス対策として、社員のメールを(すべてではないにせよ)定期的にチェックするようなことが、すでに多くの企業の総務部などで行われている。
守本氏は、そうした業務の担当者は、「実際に不正をしているわけでもない社員のメールを、『不正をしているかもしれない』という疑いの眼差しで見ることによるストレスで、メンタルを病むケースが多い」と言う。機械に解析を任せることで、従業員の健康を守ることにもつながる。
なお、不正検知、フォレンジック調査のサービスではテキストの文面だけでは分からないデジタルデータの改ざん痕跡調査や、ハッカーのリスクチェックも行う。Wi-Fiなどネットワークの出入り口をチェックしたり、電子データのハッシュ値を調べたり管理する。
注)電子データは0と1の膨大な組み合わせで構成されているが、このデータを一定の関数に通して、同じ長さになるように変換した数値がハッシュ値。すべてのデータには固有のハッシュ値があるため、ハッシュ値を調べればデータが改ざんされているかどうかを調査できる。
文書の解析は、法務関連に限らず、何にでも応用可能だ。たとえば、離職予防、うつ病のアラート、犯罪捜査の証拠になるような文書、営業の成約に結びつくような文書など、テキストの形になっていて、正解の文書がなにかということがはっきり特定できさえすれば、解析できる。離職予防、うつ予防では、たとえば面談記録の文書を教師データとして使うことができる。営業の場合は、成約した営業報告書を使用する。
なお、離職予防では、面談の報告書の文面と離職との関連では、面談時に、「○○を達成したいという目標があるので、頑張れそうです」と言っていた人が退職し、「仕事のことで不安でしかたがない、もうだめかもしれない」など、モチベーションが低く見える、否定的、消極的な内容の面談記録の人のほうが、かえって退職していないという傾向もあったという。離職予防アラートが出た従業員にフォロー面談をすることで、離職率を半減させたという実績がある。