上海の反日デモは
90后の「ステージ」の様相も

 柳条湖事件が勃発したとされる9月18日、上海でも反日ムードが一気に高まり、上海日本総領事館周辺はデモ隊の掲げる五星紅旗で赤く染まった。「魚釣島は中国のものだ」「日本製をボイコットせよ」と叫ぶデモ隊が日本領事館を取り囲んだ。

反日感情に温度差、一枚岩になれない中国<br />~上海の反日デモの現場から上海の反日デモ。毛沢東主席のプラカードを掲げる参加者も
Photo by Konatsu Himeda

 抗議現場には次から次へと異なるグループのデモ隊が参集する。言葉になまりのある者が多く、外省出身の労働者や、外省から乗り込んできたグループ、個体戸と呼ばれる個人経営者らが目立った。だが、総じて若者が多い。組織するリーダーにはまだあどけなさが残る90后世代(90年代生まれの一人っ子)もいる。

 明らかに格差社会の底辺に属する人々が圧倒的だ。彼らの富の再分配に対する不満は毛沢東思想へと傾斜させるのか、毛沢東の写真が貼られたプラカードを掲げる“分子”もいた。

反日感情に温度差、一枚岩になれない中国<br />~上海の反日デモの現場から表情にあどけなさの残る若者の姿も多かった
Photo by Konatsu Himeda

 総領事館に通じる仙霞路・遵義路・興義路・山関路はデモ隊の花道と化し、集まってきた一般民衆らがそれを撮影する。当コラムでも書いたが、経済成長の黄金期を外し、出番を失った90后にとって、唯一の“スポットライトを浴びる機会”といえば、こうした政治的扇動活動ぐらいしかない。

 都市によっては数十億円にものぼる大変な被害をもたらしたデモもあったようだが、上海の抗議デモは「俺が時代のヒーローだ」と目立ちたい若者のイベントであり、祭りであり、パフォーマンスある側面が存在する。集まってくる一般民衆もそれを知っていて「またやってる」「どうせパフォーマンスだろ」とニヤニヤしながら見ていた。