日本企業に定着した目標管理は、半期に1度しか確認しない“ほったらかしMBO” になる傾向があった。さらに、コロナ禍でリモートワークが進み、ただでさえあいまいだった目標設定や人事評価が、より不明瞭になる事態へ。特集『新しいマネジメントの教科書』(全18回)の#3では、会えない時代でも部下の成果を引き出す「新・目標設定の裏ワザ」を紹介していく。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)
手遅れになる前に“対策必須”!?
会えない時代でも、確実に成果が上がる評価へ
あなたは部下の評価をきちんとできているだろうか?
この問いに対して、自信を持って首を縦に振ることのできる人は、決して多くはないだろう。それほどまでに人事評価は難しく、その正当性は長年ビジネスの領域で議論されてきた課題だからだ。
さらに、昨今のコロナショックにより、多くのビジネスパーソンがリモートワークで顔を合わせない環境となり、それでも成果を上げなければならなくなった。マネジメントに求められるスキルは格段に上がったといえる。
人が会社を辞めるのは「正しく評価されていない」ときと「自分のやりたい仕事ができていない」ときだといわれている。
手遅れになる前に、部下を辞めさせずに済む、これからの時代の「正当な人事評価&目標設定の方法」を解説していこう。
これまでの目標管理は失敗だった!?
日本企業に根付いた “ほったらかしMBO”の実態
現在、多くの日本企業がMBOに基づいて社員の評価を行っている。MBOは、P.F.ドラッカー氏が提唱し始めたマネジメント手法だ。
MBOは「Management By Objectives」の略で、直訳すると「目標によるマネジメント」。MBOと聞くとノルマ管理の印象が強いが、それは間違い。本来のMBOには、社員の自律的な行動を促進させ、それぞれの評価への納得感を強める目的があるのだ。
しかし、残念なことに、多くの日本企業がMBOの使い方を誤っていたのだ。
MBOは、非常に自由度の高い制度で、行動や成果など何でも目標に設定できてしまう。そのため、「何を目標にするか?」のテーマ設定が大変重要なのだが、そこを怠ると失敗する。
そのせいで日本企業が陥っているダメMBOの典型が、「握らない・支援しない・できなかったことをプロセスのせいにする」の3点セットで運用される「超状況適応型」。
期初にざっくり目標を決めたら、あとは半年間ほったらかし。もし期初と状況が変わったら、「後で調整していこう」というスタイルだ。2000年代半ばに日本へ成果主義の考え方が入ってきてからずっと、そのやり方になってしまっていたのである。
それでもこれまでは対面での仕事だったので、どうにか「後で調整」で機能していた。
しかし、これからはそうはいかない。残念ながら、リモートワークが主流となった今、これまでやってきた調整が、途端に機能しなくなってしまうのだ。