新しいマネジメントの教科書#4Photo:pseudodaemon/gettyimages

企業ごとのローカルルールの存在意義は低下し、オンライン会議では上司の威厳は通用しない。「上司の能力が丸裸にされる時代」が到来したのだ。特集『新しいマネジメントの教科書』(全18回)の#4では、多様な環境で通用し、出世や転職にも役立つ「プロジェクトマネジメント」の基本を、「童話」を例にわかりやすく解説する。併せて、プロジェクトマネジメントの第一人者である飯田剛弘氏に、「令和上司」に求められる条件を聞いた。(ダイヤモンド編集部編集委員 長谷川幸光)

企業ごとのローカルルールは
もはや通用しない!

 年功序列と終身雇用が当たり前だった頃は、その企業内だけで通じるスキルを身に付け、ローカルルールに従い、上司に気に入られれば安泰だった。出世してしまえば、会議ではここぞとばかりに威厳を示してさえいればよかったのだ。

 しかし、企業の合併や提携は増加し、副業、転職、起業の活発化、そしてリモートワークの普及による、国や組織の壁を越えたコラボレーションの常態化はますます進んでいる。つまり、バックグラウンドの異なる多様な人々との業務が増えているわけで、企業ごとのローカルルールの存在意義は低下し、オンライン会議では職位だけが理由の威厳はまったく通用しない。そう、コロナ禍により、「上司の能力が丸裸にされる時代」が到来したのだ。

 そこで身に付けておきたいスキルが「プロジェクトマネジメント(以下、PM)」である。もともとPMは、プロジェクトを進める上で、国家間の言語や文化の違い、業界・企業慣行による誤解などから生じる問題を未然に防ぎ、プロジェクトを着実に成功へと導くために生まれたものだ。PMは、今のような多様化する社会でこそ本領を発揮するスキルといえる。

 しかし、PMに関するノウハウを国際的に標準化した『PMBOKガイド』や、PMの試験と資格「PMP」は、難解だ。

 なぜなら、「プロジェクト」はさまざまだからである。ルーズベルト米大統領(当時)によるマンハッタン計画も、アプリの開発も、会社の飲み会の企画も、全て「プロジェクト」なのだ。世の中に「プロジェクト」は無限に存在するのである。PMの内容をあまり具体化し過ぎると、一部の業界でしか通用しなくなる。そのため、できる限り多くの業界や、大小さまざまな規模のプロジェクトへ応用できるよう、あえて抽象化しているのだ。

 しかし、あきらめないでほしい!ものすごくやさしく解説していこう。

次ページからは、誰もが知っている「童話」を例に、PMの入り口をやさしく解説していきます。また、『令和上司のすすめ』『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!』等の著者であるマーケッターの飯田剛弘氏に、「令和上司」に求められる条件を語ってもらいました。