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インキュベーションの虚と実

大学は起業家に必要なものが揃うスゴい土壌だ!
自分次第で新たな展開が実現する正しい大学の使い方

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第11回】 2012年9月24日
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 柳生氏は「実践者が多く、教授陣がいい。まさに実学だ」と同校での勉学にどっぷりと浸かっている。「大学に来て本当によかった」と言う柳生氏は、勉学もだが、大学をフル活用してどんどん活動の輪を広げている。

 たとえば、大学院生と学部生の二名を採用したり、会社のウェブのデザインとブランディングを一新したり、幅広い。デジタルが苦手な柳生氏でもウェブに手をつけられたのは、大学を基盤にしているからこそだ。

 原田保・同大客員教授は、柳生氏を応援する教授の一人だ。昨年夏に小豆島を訪れた原田教授は、地域デザイン学会を柳生氏(参与として)とともに設立した。さらに、柳生氏が北アフリカのチュニジア共和国(乾燥気候にあったオリーブ栽培で知られる)に興味があると聞くと、原田教授はチュニジアに強いコネクションを持つ人を紹介し、そのつてで今年3-4月にチュニジアを訪問。早ければ年内にオリーブの木をチュニジアから輸入できるところまでこぎつけた。 

 原田教授以外にも、柳生氏は多くの教授や教授から紹介された人々を味方につけ、さまざまなプロジェクトを仕込み中だ。たとえば、農業と演劇を組み合わせたプロジェクトなどである。まだ成果を問うには早いが、色々と種が生まれている。

 他にも何人もの多摩大学の教授が小豆島に訪れ、柳生氏と何かやろうと話が進んでいる。また、「大学教授の紹介だと、そうでないときよりもパートナー候補はマジメに私に対応してくれる」という。これに限らず、「この歳でMBAと言うと、面白がって興味を持ってくれる」と笑う。

 「院生はみんなキラキラしている。向上心ある院生との関わりが楽しい」と言う柳生氏。近く自社のオリーブ・オイルが国際的な品評会で、日本産で初めて金賞受賞したということを日本記者クラブで発表するのだが、これも多摩大の院生の取り計らいで実現に至った。一方の柳生氏も、自らの発案で同窓会に協力を仰ぎ、卒業式用のマント40着を買ってもらうなど、多摩大コミュニティへの貢献にも積極的だ。

 これは分かりやすい例だが、柳生氏は教授と、学生同志とつながり、化学反応が次々と起こっている。柳生氏の活動を見ていると、大学とはこういったポテンシャルがある場なのだということがよくわかる。

同じ業界に閉じこもらず
大学で色んな人と出会う

 柳生氏は、小豆島出身の髙橋荒太郎翁(元・松下電器産業会長)から「小豆島を発展させたい」という想いを託された人物だ。その想いを胸に1985年に小豆島ヘルシーランドを立ち上げた。

 創業当初は、特定の土地を使った開発に取り組んでいただけだったが、現多摩大の望月照彦教授の書籍に出会って変わった。刺激を受けた柳生氏は、望月氏を直接訪ね「そこだけでなく、島全体を考えろ」との言葉をもらい、目からうろこが落ちた体験をする。それから、望月教授を慕うようになったという。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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