世界に数多くのスーパーエリートを輩出してきたハーバード大学経営大学院(以下、ハーバード)では、トヨタ自動車やソニーなど数多くの日本企業が教材として取り上げられてきたが、その多くが製造業だった。そんな中でサービス業として珍しく注目されているのが、「リクルート」だ。なぜハーバードはリクルートの経営に注目しているのか。『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)を上梓した佐藤智恵氏が解説する。

ハーバードが注目したのは
リクルート事件“後”の復活

ハーバードの起業家予備軍が心を打たれたリクルートの再生物語
ハーバードの教授陣がリクルートに注目する理由とは? Photo:PIXTA

 リクルートがハーバードの教材に取り上げられると聞いたとき、「リクルート事件」を題材に倫理の授業で使われるのだろうなと想定していました。執筆したサンドラ・サッチャー教授はモラル・リーダーシップ(道徳的リーダーシップ)の専門家であり、ハーバードの看板授業の一つ「モラル・リーダー」を長らく教えてきたからです。

 ところがサッチャー教授が注目したのは、「リクルート事件」の“後”。一時は倒産寸前といわれたリクルートがどのように成長していったか、苦境から何を学びどう生かしていったか、に焦点が置かれていました。

 リクルートがハーバードで注目されるのは、やはり積極的にグローバル化を推進しているからだと思います。本連載のコマツの回にも書きましたが、ハーバードはアメリカの脅威になりそうな企業を研究する傾向にあります。人材ビジネスで世界ナンバーワンを狙い、まさにそれを実現しようとしている企業はどんな企業なのか。その強さの源泉を知りたいと思ったのではないでしょうか。

 この教材が出版されたとき、すぐに授業で教えることを決めたのは起業家精神(アントレプレナーシップ)の専門家であるシカール・ゴーシュ教授でした。

 ハーバードの教材に取り上げられる日本企業は、今も昔も圧倒的に製造業が多いですが、教授陣の中には「日本には製造業以外にも優れた企業があることを伝えたい」「日本は優れた起業家を輩出してきた国であることをもっと伝えたい」と思っている人もいるのです。近年、リクルートをはじめ、宇宙ベンチャーのアストロスケールや、日清食品グループの創業者、安藤百福の事例が教材になっているのも、こうした流れがあるからです。