亀田製菓の事例が
「道半ば」でも教材になったワケ

ハーバードの教材になった「柿の種」が大激論を巻き起こす理由佐藤智恵氏

 また、亀田製菓の役員や社員の皆さんを取材して感じたのは、ハーバードの教員や学生から自分たちも学ぼうとする謙虚な姿勢です。通常、企業は自社が現在、直面している課題についてはあまり教材にしてもらいたくないものです。ハーバードの教材に書かれている課題が、比較的古いものが多いのも、こうした事情からです。ところが、亀田製菓は道半ばの状態をありのままに教材にしてもらいました。このような「謙虚に学習する姿勢」は、日本企業の大きな強みだと言われています。

 新型コロナウイルスの感染拡大とともに、多くの日本企業ではグローバル戦略の見直しを迫られています。こうした中、亀田製菓の事例が教えてくれるのは、海外進出においては「何のためにグローバル化するのか」を明確にすることがとても重要だということです。

 亀田製菓は「亀田の柿の種」という特定の製品を世界に広めることを目的として、海外進出しているわけではありません。米菓を広めることによって、世界の人々の健康に役立つことを目的に進出しているのです。ですから、「柿の種」がすぐに受け入れられないからといって、即撤退とはならないのです。その試行錯誤の過程は本書に詳述していますが、亀田製菓の挑戦物語は多くの日本企業に示唆を与えてくれると思います。

佐藤智恵(さとう・ちえ)
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。主な著者に『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、最新刊は『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)。講演依頼等お問い合わせはこちら。