一方で金融政策は、政府の支出を助けることもできる。もちろん、金融機関にとっても、流動性が枯渇する人々への資金提供は、本来の仕事である。金融政策は、金融機関の事業者への貸し出しを支援することができる。金融政策が、必要なことは何でもするというメッセージを発していることが、今日の苦境がこの程度で済んでいる理由である。

2006~07年に利上げをしたが、リーマン対応には役立たなかった

 冒頭で紹介した「本末転倒論」によれば、もし2017年に金利を引き上げておけば、現在、金利を下げることができたのだから、もっとうまく対処できたはずだということになる。しかし、現在、「2017年末に金利を引き上げておけばコロナショックにもっとうまく対応できただろう」という新聞記者もエコノミストも野党政治家もさすがにいない。

 そもそも、日銀はリーマンショックの前、2006年3月に量的金融緩和を解除した後、同年7月ゼロ金利を解除(0.25%に引き上げ)し、07年2月には金利を0.5%に引き上げている。金利引き下げのためののりしろを作ったのである。そののりしろを使って、2008年10月からは金利を下げていった。

 しかし、それでも、リーマンショック後の円高も株安も止めることはできなかった。のりしろを作っても役に立たなかった。のりしろよりも、量的・質的緩和によって、できることは何でもするというメッセージを出すことが大切なのである。本末転倒論の愚かさは2年のうちには理解されたのだろう。人間は、少しは進歩をするものだと思う。