特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#35では、コロナ禍であらわになった私たちの思考の限界を指摘する。モデル的思考にこだわるあまり、目の前の状況変化が見えなくなっている。必要なのは、現実を見る反証主義だ。経済問題でもそれは同じだと藻谷浩介氏はいう。(ダイヤモンド編集部論説委員 小栗正嗣)
日本に今必要なのは
現実を見る反証主義
コロナ禍ではっきりした問題はモデル的思考の限界です。
モデル的思考というのは論証主義と言い換えてもいい。論証された事実を組み合わせてモデルにし、それを基に将来を予測する。モデル自体は正しく自己完結しているので、現実がそうならなくても「原因はこれ」と言い逃れできる。
しかし、そのモデルにこだわるあまり、目の前の状況の変化が見えなくなってしまう。前提が変わっているのに、相変わらず同じモデルに当てはめようとする。
論証主義と対を成すのは反証主義です。
何かを論証はしないし、モデルも組まない。常に現実を確認して、それに合わない仮説を排除していく。これが反証主義です。
論証主義者は、これが正しいと断言し、間違ったら言い訳する。それに対して反証主義者は全てをグレーと考え、トライアンドエラーで間違いを先に発見していく。
佐藤優さんの著書によると、この二つはローマ神学とビザンチン神学に対比できるそうです。ローマ神学は「神はこれである」と論証しようとする。今の西洋的学問に近いイメージです。それに対してビザンチン神学は、「かつて神はこれだと言う人がいたが、後にインチキだと分かった。神とは何かは簡単には分からないが、少なくともこれとこれは違うので気を付けないといけない」と考える。
今回のコロナ騒動もそうですが、日本に必要なのは、モデルではなく現実を見る反証主義、ビザンチン神学の方なんです。