文系のなかには、理系コンプレックスを抱えている人は少なくありません。しかし、「読書においては文系がまさっている」と、この本に出合うまではそう思っていました。しかし……。新刊『理系読書 読書効率を最大化する超合理的サイクル』は、理系が実践している合理的な方法を読書に応用した技術です。著者は、東大生500人以上、医大生を2000人以上輩出した元駿台予備学校ナンバーワン化学講師で、バリバリの理系。本をまるで理科の実験のように扱い、最短最速でスキルハントする。インプットとアウトプットが速すぎて、これにはもうお手上げです。「速く読むこと」や「大量に覚えること」を目的とする読書術とは、一線を画した内容。最短最速で著者の経験知やノウハウを自分の頭にインストールし、自分の問題解決に役立てる至極の読書術です。
次の本を買える仕組みをつくる
「本を買ったけれども読まないで、積んだままになっている」――いわゆる「積ん読」で悩んでいる方は多いかもしれません。
「理系読書」の手法では、本はすぐ使うために買うので、積ん読にならないはずです。ただ、それでも積ん読になってしまう場合のお話をしましょう。
まず、基本的に積ん読になったからといって、気にしたり自己嫌悪に陥ったりする必要はありません。問題意識の優先順位が変わることはよくありますから。それに、本を選んで買うことは、それ自体がワクワクして楽しい行為ですよね。したがって自分を抑制しないと、ついあれこれと買ってしまうことがあるかと思います。そのうちに、読むスピードよりも買うスピードのほうが速くなり、結果、積ん読になってしまうことも……。
ただ、私からするとそれはまったく問題ではありません。大事なことは、「読書をやめないこと」。本から何かを学ぶ活動をやめなければ、それでいいのです。
もし、「せっかく買った本なのに読まないのはもったいない」というストレスを積ん読で感じてしまうなら、1つ提案です。
「理系読書」の超合理化サイクルのうち、「確かめる」を行うまでは新しい本は買わないと自分に課してみるのです。
新しい本は、1サイクルを終えたご褒美にするのです。
このようなルールを設定しておけば、ただ読むだけでなく、「確かめる」までをきちんとやろうという動機付けにもつながります。これにより、1冊の本を消化し切ることが容易になるのです。
また、本を買ったその日のうちに、目次のチェックも含め、本の情報を粗めのふるいにかけて、読むべき箇所に目星を付けることです。問題意識が最も強いのは、本を購入した直後だからです。
ここでかかる時間は5分程度。目次を読んで、自分の問題意識に合致する箇所にペンで印をつけたり、目立つ蛍光色の付せんを貼ったりするだけの簡単な作業です。
ペンで印をつけることで、返品できなくなり、古本屋にも買い取ってもらいにくくなります。「だから読まなければ」「読んで元を取らなければ」という意識も生まれます。
付せんを貼ることにも、積ん読を防ぐ効果があります。本からピンクや黄色の付せんが飛び出して見えるので、積ん読にしておくと目立ちます。
私はそれを、あえて玄関先やベッドの脇などに置いておきます。本が私に「ここおいしいから、読んで!」と、訴えかけるようにしておくのです。
すると、出かけるときについついカバンの中に本を入れることになります。その結果、いつも2冊ほど持ち歩いています。
本をカバンに2冊も入れておくと、結構な重みを感じます。それにより「こんな重たい思いをしているんだから、読まないと損だ!」と、自分を動機付けることもできます。
ちなみに私は電子書籍を読むこともありますが、理系読書の読み方をする際は紙の本をよく使っています。その場でメモを取ったり、複数ページ、または複数冊の本を比較しながら読んだり参照したりするのに、なんだかんだいっても紙の本のほうが勝手がいいためです。
余談ですが、緊急性はないものの、自分にとって長期的な視点で重要だと直感的に思った本は、理系読書の手法とは別に読むことをお勧めします。
たとえば、私は岩波文庫を中心とした哲学書や古典系の教養書が大好きなので、ベッドの枕元に置いておき、リラックスしながら時間を気にせず読むようにしています。それらの本は私にとって、問題意識外にある別腹、つまり食後のスイーツ的存在なのです。
主食にあたる本は、仕組み化して積極的に理系読書の方法で読むようにし、スイーツ的な本は好きなときに好きなだけ時間を使ってのんびりと読む。そんなふうに読み分けています。