テスト写真:森田直樹/アフロ、Takeshi Shigeishi

三菱商事の今期純利益見通しは2000億円。対する伊藤忠商事は4000億円。業界王者の座を巡るライバル対決は、伊藤忠が“ダブルスコア”で勝利を収めそうだ。そんな両雄の決算の内訳を見ると、純利益を押し上げている一因に税効果会計の「マジック」があることが分かる。特集『超楽チン理解 決算書100本ノック』(全17回)の#9は、そんなマジックの中身を解き明かす。

ファミマ上場廃止で355億円
巨額利益計上のカラクリとは

「ポケットの中にはさまざまな“隠し玉”がある。今回はその一つを繰り出したということだ」。財閥系商社の社員がそう語るのは、伊藤忠商事が11月4日に公表した2021年3月期の中間決算についてだ。近年、業界のトップ争いを繰り広げる伊藤忠、そして三菱商事の両雄はまさに「やられたらやり返す」と言わんばかりに「隠し玉」の投げ合いを演じている。

 今期の純利益見通しを4000億円に据える伊藤忠は、4~9月の中間決算で業界トップの純利益2525億円をたたき出した。「予算必達を約束する」(鉢村剛・最高財務責任者)の宣言通りに予算進捗率は63%に達し、このまま通期を独走するのは確実とみられている。

 その伊藤忠が繰り出した「隠し玉」とは一体何か。それはファミリーマート事業を統括する第8カンパニーで計上した355億円の一過性利益にある。その意味を理解するには、2年以上前にさかのぼらなければならない。