精密大手のオリンパスが「やっと」、長年赤字続きだった映像事業(デジタルカメラなど)を売却する。かつては大黒柱の一つだったが、スマートフォン搭載カメラの登場・進化で収益が悪化。近年は医療事業ほぼ一本足打法となっており、「医療機器グローバル大手並みの営業利益率20%」という大胆な目標を掲げ始めた昨年末ごろから、映像事業の“外科手術”は秒読み段階とみられていた。コロナショックによりデジカメ市場は対前年同期比で半減しており、他のデジカメメーカーにとって「対岸の火事」ではない。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
PENシリーズ、OM-Dシリーズなど
日系投資ファンドへ売却方針
経営トップの「強がりともとれる発言」が「物分かりの良い発言」になったころには、潮目が変わっていたのだろう。
医療機器大手のオリンパスは24日、伝統ある映像事業(デジタルカメラ、ICレコーダー、双眼鏡など)を売却すると発表した。黒字化を見込める事業構造にした上で分社化し、日本産業パートナーズが管理・運営するファンドへ年末までに全株式を譲渡する。映像事業の従業員は海外を中心に4270人おり、分社化前に大胆な人員整理がありそうだ。両社で意向確認書を締結したばかりで、現時点では売却額は明らかにされていない。
オリンパスの映像事業は1936年に写真レンズ「ズイコー」を用いた写真機の製造販売を開始して以来、PENシリーズ、OM-Dシリーズなど人気のフイルムカメラ、デジカメなどを取り扱ってきた。
2000年代には連結売上高の約半分を占めたが、スマートフォン搭載カメラの登場・進化などで、年々事業環境が悪化。生産拠点再編やコスト構造見直しなど相次いで収益改善策は打ったものの、わずかに黒字だった1期を除いて11年3月期から赤字続きだった。改善結果が見込まれ、新製品も投入する20年3月期の下半期は「ブレークイーブンまたは黒字の予定」(同社首脳)と強気だったが、コロナショックもあってやはり赤字(通期ではマイナス104億円)に終わり、いよいよ売却を決断したようだ。
UBS証券の小池幸弘アナリストは「デジカメを取り巻く事業環境を踏まえると、売却額は限定的だろう。しかし、企業価値の点ではオリンパスの今回の決断は大きなプラス」とみる。
オリンパスは「コロナが売却の直接要因ではない」と説明するものの、コロナショックでデジカメ市場は対前年同期比で半減(カメラ映像機器工業会の1~4月のデジカメ総出荷累計データ)している。外出規制や小売店の休業など、デジカメにとっての悪要因が重なった。
市場調査会社BCNの道越一郎アナリストによると、少なくとも国内デジカメ市場は緊急事態宣言が解除された6月に入って持ち直し始めた。だが、コロナが世界的に収束しない限り外出自粛や景気低迷は続き、長期にわたるデジカメ市場停滞は必至。そのような状況下での売却発表だった。