『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏が「著者の知識が圧倒的」、独立研究者の山口周氏も「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
専門分野の存在を「縄張り意識」だとかいう人間がいます。読書猿さんはご自身の専門ではない分野のことって分かりますか? どうして他人の専門分野を尊敬できない人がいるのでしょう?
「縄張り意識」は、集団を維持するためのものです
[読書猿の回答]
ヒトが集団を維持する生物学的基盤は、サルが群れを作ったころから引き継がれてきたものですが、そのサブ機能に儀礼的行為を遵守するかどうかで裏切り者を検知するというものがあります。
儀礼的行為が重要なのは、集団の外から見るとほとんど無意味に思えるほど煩雑な一連の行為なのに、集団の内ではそこから外れた行為をすると途端にメンバーの怒りを引き起こすところです。
科学者共同体もヒトの集団であり、集団の維持と再生産にこの検知機能が働いています。
おかげでそれぞれの研究分野や研究室で、特定の科学的研究法や研究の手本(パラダイムのホントの意味)が遵守される、また研究不正や他分野の概念のデタラメな流用が厳しく指弾される背景に、この逸脱に対する義憤があります。
しかし、この検知機能に基づく義憤が、集団の外に漏れ出てしまうと、他の専門分野の敵意や蔑視となります。つまり集団を維持する機能の副作用が、他のディシプリンに対するディスリスペクトの根っこにあります。