領土問題の本質は身も蓋もない剥き出しの利権だ
カタツムリになるよりはスズメになりたいとポール・サイモンが歌う『El Condor Pasa』(邦題は『コンドルは飛んでゆく』)の中盤に、以下のような歌詞がある。
Away I’d rather sail away
Like a swan that’s here and gone
A man gets tied up to the ground
He gives the word its saddest sound
Its saddest sound . . . hmm
ずっと遠くへ航海に出たい
世界中を旅する白鳥のように
人は大地に縛りつけられて
世界で最も悲しい声をあげる
とても悲しい声をあげる
人が哀しい声をあげる理由は、鳥のように自由に空を飛べないからだ。地上では鳥のように早くは移動できない。海や川もあれば、険しい山脈などの起伏もある。国境だって簡単には超えられない。
でもそれだけで「世界で最も悲しい声をあげる」だろうか。だって飛べない生きものは、人以外にもたくさんいる。ならばなぜ人は、カタツムリやオランウータンやイルカやミミズよりも、悲しい声をあげるのだろう。世界で最も悲しい理由は何だろう。
土地の所有をめぐって争うからだ。
ただし土地(テリトリー)をめぐって争う生きものは人だけではない。いやむしろ多くの生きものは、自分のテリトリーを必死に守ろうとする。野生に生きる彼らにとってテリトリーを失うことは、死を意味することもあるからだ。だから争いは常にある。でも殺し合いまでは滅多に発展しないし、多くの場合は先住者が侵入者を撃退する。