見た目重視の「Excel方眼紙」では
データの価値が半減する
使えるデータを集めるには、「使えるデータとはどういうものか」を知るためのリテラシーが必要です。このリテラシーは、さまざまな機器やアプリケーションを使うことで培われるのではないかと思います。
最近の機器、アプリケーションの機能は進化して、非常に使いやすく便利になっています。表計算の「Microsoft Excel」もそうしたアプリケーションのひとつです。行や列ごとの四則演算といった単純な計算からマクロなどの複雑な処理までさまざまな機能がそろっているExcelは、以前と比較して大きなデータも軽快に扱えるようになっています。
では、これを誰もが使いこなせているかというと実はそうでもありません。「ただのマス目としてしか使っていない」ケースもしばしば見受けられます。中には、データは入力されているのに足し算の式さえ使われていないこともあります。
そもそもExcelファイルを日常的に開く人でも、メニューのうち、どのくらいの機能を使っているでしょうか。例えば多くの要素が含まれたデータをいろいろな切り口で分析できる「ピボットテーブル」は、簡単に使えて非常に便利なツールです。また、複数の変数があるときに最適値を予測でき、予算策定などにも使えるアドインの「ソルバー」は、特別なプログラミングの知識がなくともデータ分析ができるツールですが、いずれも意外に使われていない印象があります。
データサイエンティストなどの専門部隊がいない企業や、部門があってもなかなか分析を依頼しにくい場合でも、元のデータさえあれば目の前のPCで処理ができるのが今の時代です。マクロまで駆使せずとも、既にある機能だけでできることもたくさんあるのに、単に「何ができるか分かっていない」ことから使える機能も使われていないのは、大変もったいないことです。
これはExcelが多機能であるがゆえのことかもしれません。多機能すぎて使える機能でも埋もれて見つけられず、結果としてデータの分析・加工ではなく“見た目に走る”使い方、つまり「Excel方眼紙」や「ネ申(かみ)Excel」と呼ばれるような使い方になっているのではないでしょうか。
しかし当然ながら、Excelはマス目として使われることを想定して設計されたアプリケーションではありません。例えば「つながった1つのデータとして扱うことで意味がある」電話番号や郵便番号などを、見た目をそろえるために1桁ずつバラして1マス1文字のデータとして扱うのでは、入力する際だけならともかく保存・活用には全く向いていないと言わざるを得ません。スプレッドシートは原稿用紙とは用途が違うのです。
このように考えていくと、機器やアプリケーションの機能をきちんと使いこなすことは、データの扱い方を知るための最初の一歩と言えるでしょう。