データリテラシーとは「数字力」
四則演算でも対応できる

 データの形式について、もう少しだけ触れておきましょう。データには「自己説明性」がある方が望ましいとされています。Excelを例に説明すると、わざわざ列の見出しに「日付」などと書かなくても、データ自体に形式がきちんと設定されていて、「これは日付形式のデータである」「文字である」「数値である」という情報が含まれている状態です。

 データに自己説明性があれば、省庁がオープンデータを外部へ提供したときに、細かいマニュアルのような資料がなくても、データそのものを見れば何を表しているかが分かるようになります。Excelで言えば、見た目を整えるツールとしてではなく数値などのデータを扱う道具として使えば、「シート自体が自分を語ってくれる」ようになります。

 データを用いた説明や表現が不得意、ということは、データの再活用ができないということにもつながります。Excelだけでなく、WordやPowerPointなどでも、「タイトル」「見出し」「本文」といったテキストの形式をテキストデータに指定することができますが、単にフォントの大小や太さといった“見た目”だけで調整しようとしてしまうと、文字の属性に関する情報はそげ落ちてしまいます。こうなると、別のアプリケーションでデータを活用しようとしたときに、その属性を補うところから始めなければならないハメに陥ります。

 また私は、データリテラシーとは「数字力」だと捉えています。実は世の中のデータ分析は、その多くが単純な四則演算でできるものです。

 一例として、かつて入社面接などではやった「フェルミ推定」というものがあります。実数で調査しようとすると難しい数字を、いくつかの手がかりを元に論理的に短時間で概算する方法です。例えば「日本国内に自動車は何台あるか」という問いに対しては、生産数や世帯数、普及率などから推定していくというやり方をとります。

 これなどはまさに、「頭の中ですばやく四則演算ができるか」という点と「推測の元となる数字(自動車の生産数や世帯数、普及率など)を覚えているか」という点が重要になります。

 高等数学を使った高度な分析ではなく、ざっくり計算するだけでも、さまざまなビジネスの意思決定を行うことは可能です。その計算を支える数字力は、データを活用する場面で大事になってくると私は考えています。

(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)