ユニークな人格を持つ昔話の主人公たちが、独自のストーリーを展開するau「三太郎シリーズ」。そのCMを手がけたのは、元電通のクリエイティブ・ディレクター篠原誠さん。独自の発想法と選ぶ生き方の背景には、“行き先”を定めるという概念がある。(ダイヤモンド・セレクト「息子・娘を入れたい会社2021」編集部)

*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2021」の「Special Interview あの人が語る新しい時代の生き方・働き方」を転載したものです。

篠原 誠 Makoto SHINOHARA クリエイティブ・ディレクター。大学卒業後、電通入社。営業志望から、クリエイティブ配属へ。2018年に独立し篠原誠事務所代表に。au「三太郎シリーズ」をはじめ、UQ 、家庭教師のトライ、トヨタイムズ、キリン一番搾り、アタックゼロ、エステー、湖池屋など数多くの広告を手がけている。

 もともと「商い」に関心があったという。だから大学は商学部。ゼミでマーケティングの授業を受けたとき、仮説を立てて検証し、実行する仕組みに興味を抱き、就職先を広告代理店に決めた。電通に就職したときは営業志望だった。マーケティングの学びをいかして営業で活躍しようと考えたのだ。ところが入社して配属されたのはクリエイティブの部署だった。

「コピーライターの見習いから始まって、コピーの100本ノックを受けました(笑)。もちろんそれまでコピーを書いた経験はなく、寿司を握ったことのない人間がいきなり寿司を握れといわれたようなもの。でもクリエイティブの仕事は意外と肉体系。実践の中で毎日毎日たくさん汗をかいてコピーを書いていると、上手くなっていくものなんです」

 当時のクリエイティブの部署には、版下の文字校正という地味な仕事もあった。単調な作業でめげそうになっていたとき、仕事上の“師匠”だった会社の先輩が、「どんな仕事にも意味がある。意味がなければ自分でつくればいい」という言葉をかけてくれた。

「その言葉に救われました。つまり“行き先”をつくれば、ものの捉え方が変わる。誰がやっても同じように見える仕事でも、意味を見つければ、未来を切りひらく仕事に変わる。文字校正の仕事も、グラフィックのプロセスを学ぶためにやっているのだと思えば集中できるし、真面目に取り組めば、意外とちゃんと誰かが見ていて、次のチャンスを与えてくれるんです」